抄録
クロロエチレン類を微生物によって脱塩素化する技術では,有害な中間生成物の蓄積を防ぐことが重要である.本研究では,Dehalococcoides sp.を含み塩化ビニルモノマーが蓄積した培養系を用いて,蓄積メカニズムの解明と蓄積した物質の更なる脱塩素化を試みた.その結果,塩化ビニルモノマーの脱塩素反応はシスジクロロエチレンの脱塩素と共役して起こっていることがわかり,このことが塩化ビニルモノマー蓄積の原因であるとわかった.また,電子供与体である水素を断続的に添加しても脱塩素化の進行に影響を及ぼさなかった.ただし,硫酸還元細菌との競合が生じる場合には,水素の供給が行われなければ,シスジクロロエチレン存在下でも塩化ビニルモノマーの脱塩素は進行せず,水素の枯渇が塩化ビニルモノマーの脱塩素の妨げになりうることが示された.