抄録
温暖化による土砂災害影響と適応策を見積もるため,日本列島を対象に気候モデル(MIROC5.0, MRIC GCM3, GFDL CM3.0, HadGEM2-ES;4モデル),およびRCPシナリオ(RCP2.6, RCP4.5, RCP8.5;3シナリオ)を用いて2050年期,2100年期における土砂災害の一般資産被害額予測と適応策検討を試みた.一般資産被害額予測の結果として,RCPシナリオに関わらず2050年期の一般資産被害額は現在比で約15億から25億円増となることと,2100年期はRCP8.5シナリオのみ2050年期比で約5億円増(現在比約20億円から30億円増)と緩やかに被害額が増加する結果を得た.また,適応策検討の結果として,現在で明らかにされている土砂災害危険箇所に対策を講ずれば相応の抑制効果が認められ,現在比で上限20億増以内の一般資産被害額でおさめることのできる可能性が求められた.しかし,土砂災害危険箇所に強化策を講じても現在よりも被害額が大きくなることには留意しなければならないため,温暖化により見込まれる被害額の増加を解消するには土砂災害危険箇所以外の領域も更に効率的に対策整備することが必要である.