抄録
本研究では,国土強靭化や今後予想される南海トラフ巨大地震の防災・減災に寄与すべく,中長期的及び短期的の両視点から,し尿処理の広域システムとその最適化について検討した.中長期的な計画として震災に備えるべく,多目的貯留槽の有効性に着目した分析を行った.また,短期的な計画として震災直後の効率的な輸送を可能にするための仮設ピット導入によるシミュレーションを行った.その結果,多目的貯留槽を整備することにより輸送効率性(ton·km)の改善効果が見込め,全施設に多目的貯留槽を整備するのではなく,重要拠点となった施設に導入すれば良いことが示された.また,仮設ピットの導入に関しては,中継輸送による費用削減効果が定量的に示されるとともに,設置すべき箇所の特定と最適容量の決定が可能になった.