土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境工学研究論文集 第52巻
ダムおよび瀬切れによる河川分断化がエルモンヒラタカゲロウの地域間交流に及ぼす影響の遺伝的評価
八重樫 咲子不破 直人山崎 久美子三宅 洋渡辺 幸三
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2015 年 71 巻 7 号 p. III_115-III_121

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抄録

 本研究では,愛媛県重信川のエルモンヒラタカゲロウ(Epeorus latifolium)の流域内遺伝子流動を明らかにした.重信川は流域中で貯水ダム,堰・砂防ダム,自然環境下で存在する瀬切れによる河川分断化が発生している河川である.遺伝子流動の解析にはミトコンドリアDNAのCytochrome Oxidase subunit I領域を対象としたDNA多型分析を用いた.その結果,貯水ダム,瀬切れによって分断された集団間では有意な遺伝的分化は認められなかった.一方で堰・砂防ダム分断区間では有意な遺伝的分化が認められた(遺伝距離=0.311-0.841,P<0.001-0.01).これは短距離に多数存在している堰・砂防ダムによってエルモンヒラタカゲロウの移動が阻害された可能性を示す.ただし,堰・砂防ダムで分断された地点間は標高差が大きいことから,地点間の水温差が成長速度の違いを生み,生殖分離が発生していた可能性もある.また,本研究で対象とした貯水ダムは湛水面積0.5km2と比較的規模が小さいため,エルモンヒラタカゲロウの移動阻害が発生しなかったと考えられる.さらに,瀬切れ区間で遺伝的分化が見られなかったことは,重信川で恒常的に自然発生する瀬切れに適応して移動する生活史を地域個体群が有している可能性を示唆している.

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© 2015 公益社団法人 土木学会
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