2017 年 73 巻 6 号 p. II_283-II_291
気候変動にともなう暑熱ストレスへの曝露の増大により,特に屋外の労働現場において高強度の身体作業に従事可能な時間が減少し,大きな経済的損失が懸念されている.本研究は,暑熱ストレスによる屋外作業可能時間の短縮を軽減するための適応策として,作業時間帯のシフトと身体作業強度の軽減について仮想的なシナリオの下で検討した.温室効果ガス排出削減を行わず気温上昇が続く仮定の下では,身体作業強度が軽減できない作業では,21世紀末には約6時間作業時間帯をシフトさせることが必要であると予測された.一方で2℃目標に対応する気候変動緩和策が実現できた場合には,必要な作業時間帯シフト量は2時間以内に抑えられると予測された.適応策の困難度を現実的な範囲に抑えるという観点からも,気候変動緩和策の実行が不可欠である.