抄録
本研究では,地方自治体のエネルギー供給システムを対象に,2段階確率計画法を用いて将来の不確実性を考慮した長期計画モデルの開発及び実証的検討を行った.2段階確率計画法は,株式投資など不確実性下における最適戦略を導出する数理計画法であり,本研究では将来の各エネルギー需要量,系統電力需要におけるCO2排出原単位を不確実要素とし,その中で最適なエネルギー施設計画を導出するモデルを開発した.本モデルを用いて2016年から2050年における富山県の最適なエネルギー施設計画を導出した結果,再生可能エネルギーの中でも,富山県が多く保有する水力発電や地熱発電が導入される結果となり,化石燃料や系統電力消費量が大きく削減される結果となった.最終期(2046年から2050年)における電源構成は,系統電力からの供給量が45.6%,地熱発電が29.5%,水力発電が14.3%,その他の再生可能エネルギーが10.6%となった.本モデル開発により,従来の長期エネルギー計画では考慮されてこなかった将来における不確実要素を考慮した上で,最適なロードマップの検討が可能になった.