抄録
生活者の交通によるCO2排出の削減は低炭素型ライフスタイルを実現する上で重要課題である.本研究では,家計調査によるガソリンや公共交通への支払額や,小売物価統計,LCAデータベースなどを活用し,生活者の交通に伴うCO2排出を推計し,その都市間比較を行った.自動車利用のCO2排出は,ガソリン消費による直接CO2排出だけでなく,自動車の製造や整備等に伴う間接CO2排出も算出した.この結果,大都市ほど交通によるCO2排出が少ない傾向が生じた.そこで,都市化の程度を代表する変数として可住地における人口密度を選択し,ガソリン消費によるCO2排出との関係を調べた結果,明確な負の相関が生じた.また,自動車保有台数と自動車に関わる直接・間接CO2排出との関係を調べた結果,正の相関が得られた.次に,移動距離を概算し,人口密度によるマクロ推定式を構築することにより高密度化の影響を移動距離の縮小と公共交通への移行という二通りの要因に分けて把握した.