抄録
我が国の農山村地域では過疎高齢化に伴う地域衰退が深刻化しており,地域・生活の質の維持を可能とする地域再設計が求められている.本論文では日常移動環境の現状調査を行うことで,農山村における移動を中心とした日常生活上の課題整理を試みた.また,再設計効果の予測に資するPTデータの収集を行った.得られた結果として,自動車の交通分担率は90%を占め,公共交通の利用分担率は徒歩よりも低い2%であり,利用頻度および依存度が高い傾向を示した.また,年代および居住地と交通弱者には相関性があり,後期高齢者の40%が自身を交通弱者と評価した.これらの結果は,農山村地域が抱える公共交通の満足度の低下,買い物サービスの不便さなどの問題と関係しており,農山村では移動を中心とした日常生活上の課題が山積していることが示された.