土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
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環境工学研究論文集 第55巻
数理最適化を用いた広域化水道システムの長期運用・更新計画立案の手法開発
賀須井 直規中谷 隼春日 郁朗古米 弘明
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2018 年 74 巻 7 号 p. III_111-III_122

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抄録

 持続可能な水道システムの実現に向けた取り組みとして水道広域化やアセットマネジメント(AM)が注目されているが,水源量や水需要量といった制約条件や施設状態に関する将来の時間的変化に適切に対応させた,広域・長期での水道施設運用・更新計画を立案するための手法は確立されていない.
 本研究では,水源における取水から配水池への送水までの水道システムを解析対象として,その運用・更新計画の立案問題を数理的に定式化した上で数理最適化を適用することで,必要な施設更新を遂行しつつライフサイクル費用が最小となる計画を立案するための手法を開発した.
 事例分析として,群馬県東部地域を想定した仮想の地域(人口約45万人,面積約400 km2)において,8水道事業体による個別給水による水道システムを仮想的に取り上げた.向こう50年間を対象に,仮想的に与えた浄水場と主要管路施設の初期状態,時系列的な取水可能量や水需要量,地形といった制約条件に基づき本手法を適用した.広域化による事業体間での浄水場のネットワーク化や統廃合を検討した場合,それらを検討しない個別事業体単位での計画案に比べ,全計画期間を通じた平均費用が10.4%小さくなった.また,浄水場の利用年数上限を90年から70年に短くする老朽化対策に係る費用は,広域化検討によって8.9%削減された.施設老朽化対策を含むAMと広域化とを統合的に考慮することは,経済性の向上において有効であることが示唆された.

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© 2018 公益社団法人 土木学会
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