抄録
畜産動物は抗菌薬を投与される場合があり,薬剤耐性菌の発生源となり得る.また,ネズミなどの小動物が,畜産動物の残餌やふんなどを摂餌する様子も観察されている.したがって,畜産動物から小動物へと薬剤耐性菌が伝播され,自然環境へ拡散する可能性は否定できない.本研究では,住吉牧場で飼育される肉用牛と畜舎周辺の野生ネズミを対象に,11種類の抗菌薬に対する薬剤感受性試験を実施した.ウシとネズミで,1剤以上に耐性を示した大腸菌が検出された個体の割合は,それぞれ50.0%と41.2%であった.また,両方のふん便からアンピシリンとテトラサイクリンに耐性を示した大腸菌が検出された.薬剤耐性を保有する畜舎内のウシと畜舎周辺におけるネズミの分布状況から,ネズミが薬剤耐性大腸菌を媒介し,環境に拡散している可能性が示唆された.