抄録
先行研究では,下水処理水の連続灌漑によって低コストで,タンパク質の含有率の高い米を生産できることを実証した.タンパク質は家畜飼料の重要な成分であり,その含有率の高い米は一般に飼料としての価値が高い.下水処理水栽培米の家畜飼料としての有用性を調べる第一歩として,本研究では2つの試験を実施した.第一はウシに対する嗜好試験で,下水処理水栽培米と食用米を並べて給餌すると,ウシは両者を同程度に食べた.下水処理水栽培米に含まれる成分は,ウシの嗜好性に影響を与えなかった.第二の試験では,下水処理水栽培米を含む配合飼料を卵用鶏に給与し,卵の生産量と品質を調べた.その成績は,対照としてのトウモロコシを含む配合飼料を給与したケースと遜色がなく,下水処理水栽培米を家畜飼料として用いることに問題は見られなかった.