抄録
膜ろ過浄水施設の多くで採用されている中空糸ろ過膜は,使用年数の経過により破断する可能性があるため,膜の劣化状況を把握し,適切な膜交換を行う必要がある.そこで本研究では,膜破断データから将来の破断本数を予測し,適切な膜交換時期を推定することを目的として,実施設の膜破断データを解析した.その結果,全国の膜ろ過浄水場の原水水質から膜ろ過工程に期待される濁度や大腸菌の対数低減率(LRV)を2.26と設定し,これを上回るLRVを保つための膜破断率を0.028%と推定した.一方,破断した膜モジュール内の流れモデルから,LRVは膜の破断位置に大きく影響されることを示した.実施設の中空糸膜破断データを,線形モデル,二項分布モデル及び一般化線形モデルにより解析することで,これらのモデルの特徴と中空糸ろ過膜の交換時期の推定法を提示した.