2019 年 75 巻 1 号 p. 1-12
開発途上国でのpoint-of-use型浄水装置への応用を想定し,重力式膜ろ過における膜透過流束のファウリング層形成への影響を実験的に評価した.ポリエーテルスルホン(PES)及びポリアクリロニトリル(PAN)製限外ろ過膜を用い,河川水の定圧ろ過を行ったところ,膜透過流束が大きいPES膜では,PAN膜に比べてろ過抵抗の増加率は約1/3と小さかった.膜閉塞モデルを適用したところ,PES膜ではケーキ層抵抗が卓越していたが,PAN膜では卓越した抵抗が得られずモデル適用の限界があった.
共焦点レーザー顕微鏡によるファウリング層の解析から,PES膜では,PAN膜に比べて比表面積と空隙率が大きいファウリング層が形成されており,ファウリング層構造の違いがファウリング抵抗に大きく影響することが示された.