2019 年 75 巻 5 号 p. I_363-I_369
気候変動により将来的に高潮被害が増加することが懸念され,また実際に高潮被害が発生した際に,迅速に被害を把握することが求められている.本研究では従来手法であるロス関数と,新たにニューラルネットワークを用いた早期損害推定手法について考案し精度を比較した.まず,525パターンの想定台風に基づき高潮数値解析を実施し,東京湾沿岸の家屋や事業所などの損害額を推定した.次に,それらの結果に基づき,ロス関数とニューラルネットワークを構築した.最後に,検証用データを活用して2つの手法により高潮損害額を推算し,推定精度を比較した.結果として,従来の手法であるロス関数よりも,ニューラルネットワークを用いた手法のほうが高潮損害額に対する推定精度が高くなった.この成果は,大規模高潮発生時の,より高精度な早期損害推定に活用されることが期待できる.