2019 年 75 巻 5 号 p. I_371-I_379
福岡市西部に位置する今津干潟はカブトガニ等の生息地であり,生態的に貴重な環境となっている.生態環境保全のために,本研究では今津干潟北東部から今津干潟に流出する栄養塩負荷量をモデルによる水収支解析と解析対象領域内の複数の観測点における水質分析により推定した.その結果,解析領域内の今津干潟に流出する地下水分布範囲と地下水流動方向が解明された.また,地下水位と潮位変動から地下水は潮汐の影響を受けにくいことが分かった.さらに,解析領域内で栄養塩濃度が高い値を示した観測井付近の地下水は肥料による地下水汚染の影響が示唆され,その地下水はカブトガニの主な産卵地である砂地を通過する可能性が高いことが判明した.本モデルの解析では地下水位観測値を精度良く再現でき,対象領域からの栄養塩流出特性が明らかとなった.