2019 年 75 巻 7 号 p. III_1-III_10
本研究の目的は,導電性コンクリートを用いた下水管内の硫化水素を抑制する技術を開発することである.本研究の結果,導電性コンクリートを用いることにより水中の硫化水素を大幅に抑制できることが分かった.そしてその抑制効果は66日間の実験期間中持続した.また,導電性コンクリートでは実験後の汚泥堆積物に元素硫黄が含まれており,硫化水素から元素硫黄への酸化反応が確認できた.つまり,導電性コンクリート壁内に電子の伝達経路が形成され,嫌気的環境にありながらも水面近傍に存在する酸素を電子受容体として利用して硫化水素を酸化・抑制できることが分かった.なお,この硫化水素の酸化においては,近年微生物燃料電池への活用が着目されている「電子放出菌」の寄与は比較的小さく,化学的な酸化が主なメカニズムと考えられた.