2020 年 76 巻 5 号 p. I_221-I_231
気候変動に伴う海面上昇等の浸水影響に対してグレイインフラとグリーンインフラを組み合わせた適応策が有効だと考えられる.筆者らはこれまで都市域や人口分布によってグレイインフラかグリーンインフラのいずれかの設置を仮定した場合の費用分析を行ってきた.しかし,同一の汀線でグリーンインフラとグレイインフラの多重防護が実施されている地域もある.本稿は,ベトナムとフィリピンを対象に,従来の防護シナリオを見直し,同一の汀線に堤防のみで防護する場合とマングローブ林と堤防等を組み合わせ多重防護する場合の費用を比較した.その結果,マングローブ林を海岸防護に有効活用することにより,必要な堤防の設置量が減少し,適応費用が軽減され,費用効率性が高まることが確認された.