土木学会論文集G(環境)
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地球環境研究論文集 第28巻
世界を対象にした洪水による作物収量変化を通じた食料消費と飢餓リスクへの影響評価
関 祐哉長谷川 知子藤森 真一郎
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2020 年 76 巻 5 号 p. I_89-I_95

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抄録

 気候変動対策をとらない場合、将来の洪水の範囲や強度が増加することが報告されているが、これまで洪水による食料消費・飢餓リスクへの影響は評価されていない。本稿では、世界を対象にした洪水による作物収量変化を通じた食料消費と飢餓リスクの影響を明らかにすることを目的とする。さらに適応策として、その影響に対応するのに必要な食料備蓄量を算出した。世界経済モデルAIM/Hubを用いて世界17地域の食料消費や飢餓リスクなどを算出し、洪水による影響を算定した。結果としては、2030年に世界全体で飢餓リスク人口が約1060万人(780~1290万人; 複数のモデルによる不確実性幅)増加し、平均食料カロリー消費量は6.6kcal/人/日(5.3~8.6kcal/人/日)減少する。途上国では被害が大きく、その他アフリカでは飢餓リスク人口が約550万人(340~590万人)増加し、平均食料カロリー消費量は約14kcal/人/日(10~14)減少した。これらの影響を防ぐための食料備蓄必要量は約190万トン(140~190万トン)となった。

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