2020 年 76 巻 6 号 p. II_115-II_120
ニホンウナギは漁獲量が急激に減少しており,河川生活期の生態に関する知見を集積することが求められている.本研究は,愛媛県道後平野南部を流れる2河川でウナギとその餌資源である底生無脊椎動物の調査を実施し,これらの量的関係を解析することにより,餌資源量がウナギ生息量に及ぼす影響を把握することを目的とした.解析の結果,底生動物量の多い地点でウナギ生息量も多いことが明らかになった.この結果は,ニホンウナギ個体群の回復を目指す今後の保全活動において,餌資源となる生物の保全が有効であることを示唆している.ただし,上記の関係は河川によって異なり,餌資源量以外の環境要因がウナギ生息量の決定に関与している可能性も示されたことから,今後は広域的かつ多地点での調査を実施する必要があるものと考えられた.