2020 年 76 巻 6 号 p. II_219-II_226
本稿では,琵琶湖岸の卓越風が北西から北に寄りにシフトしている傾向を踏まえ,湖岸エネルギーフラックスを指標として,複数のシナリオ下での風向変化後の湖岸タイプの遷移をシミュレーションした.
その結果,卓越風が北寄りになると,琵琶湖東岸の愛知川河口〜天野川河口付近では湖岸エネルギーフラックスが増加し湖岸侵食が激しくなること,琵琶湖大橋〜長命寺川河口付近では流入河川デルタの左岸側では湖岸エネルギーフラックスが低下し植生帯が分布しやすい傾向になることが確認された.
以上の結果を踏まえて,植生帯保全・砂浜保全を優先すべきエリアおよび対策工法を絞り込むとともに,こういった湖岸域で生じる新たな課題については,流域ガバナンスを視野に入れた琵琶湖保全再生計画の枠組みを活用することで,関係機関の協調のもとでの実質的な対応が可能となることを提言した.