2020 年 76 巻 7 号 p. III_361-III_366
夏季に発生したMicrocystis属を主とするアオコは,秋季には沈降し,底泥上に堆積する.そこで,炭素・窒素安定同位体でラベリングしたMicrocystis属を用い,沈降・堆積後の特性ならびに底生動物の利用可能性について検討した.その結果,Microcystis属は再懸濁した底泥とともに速やかに沈降した.底泥と混合することで分解速度が上昇したが,底泥中のMicrocystis属由来有機物は,デトリタスまたは従属栄養細菌等の生物体として底泥中にとどまっていると示された.また,Microcystis属分解物を含む底泥を給餌した結果,底生動物3種類(ユスリカ科幼虫,ドブガイ類,マシジミ)すべてでMicrocystis属由来有機物を摂餌したと示された.Microcystis属混合後の培養期間が異なる二種類の泥を給餌したところ,ユスリカ科幼虫とマシジミは,培養期間の長い泥と短い泥で同化効率が異なっていたと示唆された.