土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
76 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第57巻
  • 新田 真弓, 藤林 恵, 青森 壮汰, 岡野 邦宏, 宮田 直幸
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_1-III_9
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     ゾウミジンコが藍藻を餌として利用していることから,ゾウミジンコを活用した藍藻抑制技術の開発が期待されている.本研究ではワカサギのゾウミジンコに対する捕食の有無と選択性の評価を目的として,秋田県八郎湖においてワカサギの胃内容物および脂肪酸組成を調べた.藍藻が異常増殖する夏季に,ワカサギ胃内容物はゾウミジンコに85.4%を占められており,ゾウミジンコが主な餌源であることが分かった.特に,体長5cm以下のワカサギが選択的にゾウミジンコを捕食していた.また,夏季にワカサギとゾウミジンコに含まれる藍藻由来脂肪酸の含有率が増加しており,脂肪酸分析からもワカサギがゾウミジンコを捕食していることが示された.ワカサギを漁獲することでゾウミジンコへの捕食圧が低下し,その結果藍藻の抑制効果が高まると期待される.

  • 小松 一弘, 中川 惠, 土屋 健司, 高津 文人, 篠原 隆一郎, 松崎 慎一郎
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_11-III_17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     一次生産速度の計測手法として注目されている FRRF(Fast Repetition Rate Fluorometry)法は,迅速に大量のデータを取得できる利点をもつ.本研究ではこれを生かし,2016~2019年の4年間に,霞ヶ浦で一次生産量の観測を行った.湖内の一次生産量に影響を及ぼす因子は,大きく分けて藻類の現存量と光合成活性が挙げられる.そのうち藻類現存量は,年によって強弱はあるものの一次生産量にある程度の影響を与えていることが示された.また相関分析の結果から,光合成活性に対して影響を及ぼす水質項目は,霞ヶ浦の場合,光の鉛直消散係数(Kd)であることが示された.さらに河口近くの調査地点では,降雨時における硝酸性窒素(NO3-N)の河川からの流入も,大きく影響を及ぼしていることが分かった.

  • 明間 大輝, 青木 宗之
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_19-III_25
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,平常時における魚類の遊泳行動に着目し,杭水制の河川環境機能を明確にすることを目的とした.そのために,直径が比較的大きい円柱を用いてウグイを用いた挙動実験と水理実験を行った.

     その結果,ウグイの存在箇所は,主に 1)円柱群内,2)円柱群下流域,の2パターンであった.また,ウグイは円柱群内では主に円柱直下流に存在した.その場の流速は4BL/s以下であり,ウグイは持続速度以下の流れを選好したと考えられる.なお,各ケース間では円柱直下流での横断方向の流れに差が生じたが,各ケースにおけるウグイの円柱群内存在時間に差は生じなかった.これは,円柱直下流の流速vが2BL/s以下であり,ウグイはその流速の影響を受けなかったためだと考えられる.また,ウグイは同一y軸上の円柱設置間隔が体長よりも広かったこともあり,円柱群内に存在しやすかったものだと考えられる.

  • 湯谷 賢太郎
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_27-III_32
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,絶滅危惧種であるミナミメダカと外来種であるカダヤシの流水場からの忌避行動や退避場の利用の仕方の違いについて明らかにすることを目的とし,退避場を設置した水路を用いた実験を行った.

     実験より,ミナミメダカには走流性が見られ,さらに流速に合わせてその行動を変化させることが示された.また,ミナミメダカは流速が15cm/sになると明確に退避場を利用するようになることが示された.対照的に,カダヤシには走流性が見られず,流速の増加に伴って退避場を利用する割合が増加し,明確に退避場を利用し始める流速は確認できなかった.このことから,ミナミメダカとカダヤシは一見同様な生息条件のもとで生息しているが,ミナミメダカは流れに対する抵抗性が強く,カダヤシは止水性の性質の強い魚であることが明らかとなった.

  • 増田 貴則, 堤 晴彩, 岩田 千加良, 浅見 真理
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_33-III_42
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     給水人口100人以下の水供給システムを利用・管理している集落を対象に,水供給システムの維持管理や断水等のトラブル発生の現状を把握するとともに,設備の点検管理記録や維持管理マニュアルの有無,行政や他の集落との連携状況,研修会等の有無,集落役員が点検や清掃などの管理作業に対して感じている負担感等を整理することを目的とした質問紙調査を行った.

     回答結果より,設備の点検記録や維持管理マニュアルなどの文書を有している集落は少ない一方で,自然災害や施設故障等を原因とした断水や利用停止がたびたび発生しているなど水の安定供給や施設の維持管理に様々な困難を抱えていることが把握できた.また,実施例は少ないが研修会が役立っていると感じていることや,維持管理において負担が重いと感じている作業について把握することができた.

  • 高荒 智子, 渡邉 夏実, 小針 洸二, 西山 正晃, 渡部 徹
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_43-III_52
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     緩速ろ過池の発光ダイオードを装備した覆蓋技術の開発を目指して,ラボスケールのろ過実験で青色LED照射による処理水質および生物ろ過膜への影響を調べた.比較のため,太陽光照射および遮光の条件でも同様の実験を行った.その結果,青色LED,太陽光ともに生物ろ過膜の成長とろ層表面の好気的環境の維持に寄与した.生物ろ過膜の微生物群集を解析したところ,青色LEDや太陽光を照射しても細菌密度は変わらなかった.処理水質については,青色LEDと太陽光の条件で処理水の硝酸性窒素濃度の低下が見られた.これは,生物ろ過膜中で明らかに増殖したCyanobacteriaによる硝酸同化の結果であろう.青色LEDは弱い光強度でも光合成生物の増殖を阻害しない上に,太陽光に比べて生物ろ過膜を緩やかに成長させることができ,安定的なろ過池の維持への貢献が期待できる.

  • 杉山 琴美, 風間 しのぶ, 小熊 久美子, 滝沢 智
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_53-III_63
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     近年,海外の大都市で発生した深刻な水不足の要因には,降水量の変動や水需要増加のほかに,水ガバナンスの欠如があると指摘されている.本研究では,インドのチェンナイ都市圏において,2019年6月に発生したDay Zeroとよばれる大規模な水不足の要因を降水量と貯水量変化から解析した結果,18か月降水量の減少と乾季の終わりまで無降雨が続いたことが,直接的な要因であることが示された.一方,Day Zero前後のSNS解析により,市民は早い段階で水を確保する手段を求めていたが,水道事業者からの情報発信が遅れ,さらに市民が求める情報を提供できなかった可能性が示された.また,市民が発信するSNSのキーワード解析から,チェンナイ市民が水危機を深刻な問題ととらえ,ガバナンスの改善を求めていることが明らかとなった.

  • 佃 成槻, 酒井 宏治
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_65-III_75
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     水道施設の老朽化と維持管理に関する指標として,法定耐用年数超過率・経年経過率のほか,職員数などの人的資源,給水収益などの金銭的資源に関する指標を取り上げ,検討・分析を行った.その結果,給水人口規模が大きくなるにつれ,法定耐用年数超過率・経年経過率が大きくなり,施設能力あたりの職員数や給水収益も多く確保されていることがわかった.また,人的・金銭的資源が増加している事業体には,施設能力を減少させている,稼働率を上昇させている,受水比率を上昇させている,などの特徴があることがわかった.さらに,広域化,官民連携を実施した事業体では法定耐用年数超過率が改善していること,金銭的資源の確保の傾向が見られること,広域化事業体と官民連携事業体では人的資源の確保についての考え方が異なることが示唆された.

  • 髙島 正信, 矢口 淳一, 奥畑 博史
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_77-III_84
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     余剰汚泥に前加熱処理(150℃,1時間)を施した下水汚泥の高温嫌気性消化において,粉末活性炭の添加と塩化鉄による汚泥調質を適用した消化汚泥の活性化と脱色について検討した.流入全固形物質(TS)約7.5%,温度55℃,水理学的滞留時間20日の条件下,流入TSに対し約2%の活性炭を添加すると,有機物分解率とガス発生率はわずかしか改善されなかったものの,平均して消化汚泥中のプロピオン酸が96%,ろ液色度が29%減少した.よって,活性炭は中間代謝物質の微生物代謝促進に極めて有効であった.また,塩化鉄に両性ポリマーを組み合わせた消化汚泥の調質は,Fe添加率6~10%TSで脱水性を保ちながら,色度を最大約1/4まで低下させた.以上より,両法は前加熱処理に伴う着色という課題を小さくできることがわかった.

  • 福島 聖人, Kanathip PROMNUAN , 安井 美智, 鈴木 祐麻, 今井 剛, 佐久間 啓, 人見 隆
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_85-III_92
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,導電性コンクリートが下水管内で生成した硫化物(硫化物イオン,硫化水素イオン,および硫化水素)の濃度を低減するメカニズムについて理解を深め,市販の導電性コンクリートより高い効果を示す導電性コンクリートを開発することである.まず,下水汚泥から分離した電子放出菌の植菌が硫化物の濃度に与える影響を評価した結果,植菌により硫化物が低減されることが確認できた.つまり,硫化物が電子放出菌により酸化されていることが分かった.次に,アセチレンブラックおよびマグネタイトを導電性物質として選定し,これらの導電性物質の配合量が異なる導電性コンクリートを用いた実験を行った.実験の結果,配合量を最適化した新規導電性コンクリートは,市販の導電性コンクリートより高い硫化物低減効果を示すことが分かった.

  • 小川 絵莉子, 下道 諒志, 石川 奈緒, 笹本 誠, 伊藤 歩
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_93-III_101
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,固体状キレート剤による下水消化汚泥からの有害重金属類の除去手法の開発を目指し,繊維状キレート剤による酸性模擬廃水および下水消化汚泥中の溶解性重金属類の吸着に及ぼす反応時間およびpHの影響について検討した.まず,模擬廃水での吸着実験では,キレート剤は1時間程度で重金属を吸着でき,pHが3以上の条件において,その吸着効果を十分に発揮することが分かった.次に,下水消化汚泥を酸性(pH = 2)にして溶出させた重金属類の吸着実験では,pHを2から2.5や3に上昇させることでキレート剤への吸着量が増加したが,汚泥に再吸着する量も増加した.pH 2においてもキレート剤への吸着がみられたことから,強酸性条件下であっても下水消化汚泥から溶解性重金属類を吸着除去できる可能性が示された.

  • 青葉 隆仁, 大下 和徹, 日下部 武敏, 高岡 昌輝, 藤森 崇
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_103-III_112
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,2種類の粉末の高分子凝集剤を用い,ポリマー水溶液の保管条件と性状変化との関連性を明らかにした.まず水溶液作成時における溶解時間を決定した後,水溶液中のポリマー濃度や保管温度,保管時間などを変化させ,試料の紫外可視スペクトル,コロイド当量を測定し,性状変化との関係を考察した.

     その結果,電気伝導度の変化を利用して溶解時間を決定することができ,これに基づく溶解時間でポリマー水溶液を作成した.保管条件と性状変化との関係をみた実験では,紫外可視スペクトルによって,保管温度が高いほど,ポリマーの加水分解由来の構造変化が進行していることが確認された.コロイド当量値も保管温度が高いほど,時間に伴い減少が顕著になった.これは,加水分解の進行に伴って解離基の電荷が失われたものと考えられた.

  • 呉 青栩, 土山 美樹, 鈴木 準平, 藤田 昌史
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_113-III_119
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     都市下水(5倍希釈)およびその成分を汽水性二枚貝ヤマトシジミに曝露し,生化学レベルの酸化ストレスマーカーの応答,個体レベルの成長力の応答をそれぞれ調べた.都市下水中の溶存態画分はカタラーゼ,酸素ラジカル吸収能,成長力に,懸濁態画分はスーパーオキシドディスムターゼ,成長力にそれぞれ影響を及ぼした.4種類の酸化ストレスマーカーの応答の結果を統合化して解析したところ,アンモニアとそれ以外の溶存態成分が共存するとヤマトシジミに最もストレスを与えることがわかった.また,酸化ストレスマーカーの統合指標と成長力の間には,負の対応関係が見られた.

  • 北村 友一, 阿部 翔太, 服部 啓太, 山下 洋正
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_121-III_130
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,二次処理水を用いてゼブラフィッシュの胚・仔魚期の曝露試験を行い,ふ化率,生存率と網羅的遺伝子発現への影響,さらに,希釈およびオゾン処理による遺伝子発現影響の低減効果を調査した.二次処理水,オゾン処理水の曝露による遺伝子発現への影響レベルは,河川水の同様の曝露結果と比較した.その結果,二次処理水最大濃度(80%)においてもふ化率や生存率に影響は見られなかったが,遺伝子発現への影響は見られた.二次処理水の割合が減少するに従い,発現変動遺伝子数も少なくなることが確認された.二次処理水曝露により免疫,代謝,ストレス応答,シグナル伝達など様々な影響を受けていることが示唆された.二次処理水は10倍希釈,または,オゾン処理により,遺伝子発現への影響を河川水レベルまで低減できることがわかった.

  • 西山 正晃, 添田 慶, 高荒 智子, 有地 裕之, 渡部 徹
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_131-III_139
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     栄養塩が豊富な下水処理水は藻類培養の基質として適している.本研究では,仔魚や稚魚,エビなどの餌となる動物プランクトン(アルテミア)が好む藻類の生産を目指し,処理水に生息する微細藻類を処理水のみを基質として培養することを試みた.20℃での培養では,処理水中の微細藻類の明らかな増殖が確認された.特に緑藻類の増殖が著しく,モノラフィディウム属とクロロコックム属が優占した.その指標としてのChl.a濃度は,処理水の初期DTN濃度と有意な相関があった.採取時の処理水の温度が低い場合には,増殖開始までに遅れが見られた.15℃での培養では増殖が制限され,その際には珪藻類の存在割合が増加した.処理水中で増殖した藻類を給餌する実験では,微細藻類がアルテミアの生存時間を延ばす効果があることを示す結果が得られた.

  • 穐田 南海, 蔵下 はづき, 島 武男, 村田 岳, 幡本 将史, 山口 隆司, 青井 透, 黒田 恭平
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_141-III_148
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,殺線虫剤によらない線虫害抑制技術の開発に向け,し尿汚泥を活用したBacillales目細菌・自活性線虫優占化土壌改良資材施用による連作障害発生カンショ栽培圃場の細菌・線虫群集構造変化を評価した.カンショ圃場より採取した土壌試料を用いてDNAシークエンス解析,植物寄生性線虫の定量PCR,ベルマン法による線虫種の判別を行った結果,殺線虫剤区や非防除区と比較して土壌改良資材施用区(1t/10a, 3t/10a)では,元々圃場に存在していなかった土壌改良資材中の放線菌・Bacillales目細菌が成育環境を獲得し,自活性線虫密度が約2倍となった.また,殺線虫剤区および土壌改良資材施用区(3t/10a)において,Dorylaimida目の雑食性線虫が線虫全体の2%以上検出され,無施用区および土壌改良資材施用区(1t/10a)で検出されたDorylaimida目の存在割合の約12倍を示した.

  • 木内 壮一朗, Helmano Fernandes , 羽深 昭, 木村 克輝
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_149-III_155
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     膜分離活性汚泥法(MBR)は活性汚泥法と比べて様々な長所があるが,運転中に発生する膜ファウリングが問題となっている.様々なタイプの汚れに対して洗浄効果が報告されているマイクロバブル・ナノバブルはファウリングが発生した膜を効率的に洗浄できる可能性がある.本研究では,ベンチスケールMBRを用いて,マイクロバブル・ナノバブルの膜洗浄効果に関する基礎的検討を行った.マイクロバブルを用いた浸漬洗浄では大きな洗浄効果が確認された.ナノバブルは浸漬洗浄では十分な洗浄効果を発揮しなかったが,粒状担体流動と併用しながら逆洗水に混入させることで化学薬品を用いた逆洗と同等以上の洗浄効果が確認された.ナノバブルによってMBR汚泥に及ぼす悪影響は,化学薬品の使用によって及ぼされるものより小さいことが示された.

  • 佐藤 翼, 二宮 佑輔, 角田 貴之, 羽深 昭, 土屋 達, 木村 克輝
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_157-III_163
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     粒状担体流動と薬液添加逆洗(CEB)を併用した洗浄方法を組み込むセラミック平膜MBRでは、膜ファウリングを制御しながら高フラックスでの運転ができる可能性がある。しかしながら低水温時の運転においては、透明な膜面堆積物(ゲル層)による膜ファウリングが深刻化する。そこで本研究では、水温低下に伴うゲル層変化有無の調査を目的とし、様々な方法を用いてゲル層の構造・成分を分析した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察及びエネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素分析より、ゲル層の構造と元素組成が水温変化に伴って大きく変化することが示された。フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いた分析では、水温低下時にゲル層中タンパク質および脂質の割合が増加すること、汚泥上澄水中0.45μm以上の成分がそれらの起源となっていることが示唆された。また、水温低下に伴いゲル層と汚泥上澄水中有機物の糖/タンパク質比が低下したことから、低水温期のゲル層形成においてタンパク質成分が重要な関与をしていたことが推定された。誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)の結果、水温低下時にはゲル層に含まれるFeとPの増加が顕著であったことが示された。

  • 内藤 りん, 角田 貴之, 羽深 昭, 木村 克輝
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_165-III_171
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では実都市下水を処理するパイロットスケールMBRを300日以上連続運転し,MBR汚泥中で汚泥ろ過性に影響を及ぼす成分の季節変動を追跡した.MBR汚泥中のコロイド画分TOC,溶解性リポ多糖(LPS)濃度およびバイオポリマー濃度とMBR汚泥ろ過性との間に強い相関が認められた.MBR汚泥中で膜ファウリングに影響を及ぼすサイズ画分を検討した結果,0.45µm以上1.0µm以下および5.0µm以上11µm以下のコロイド成分が膜ファウリングの発生に強い影響を及ぼすことが示唆された.また,MBR汚泥中バイオポリマーを分離・精製し,従来の研究においてバイオポリマーのモデル物質として用いられてきたアルギン酸ナトリウムとの比較を行った.MBR汚泥中のバイオポリマーはアルギン酸ナトリウムよりも深刻な膜ファウリングを発生させ,従来の想定よりも高い膜ファウリングポテンシャルを有することが示唆された.

  • 五十棲 直子, 紀 佳淵, 李 玉友
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_173-III_179
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     下水の活性汚泥処理は曝気によるエネルギー消費と多量の余剰汚泥発生が問題となっている.そこで省エネルギー・創エネルギーかつ汚泥発生量も少ない嫌気性MBRが,新たな排水処理技術として注目されている。本研究では,実下水を対象とした連続処理実験を行い,運転温度とHRTを変化させて,それぞれの処理水質,バイオガス生成を評価し,物質収支を求めた。標準活性汚泥法と同等のHRT6hにおいて運転温度20°Cであっても処理水BOD濃度< 20mg/L,COD濃度 < 50mg/Lであり,除去率は90%を達成した.HRT6 h・運転温度25°Cにおいてガス生成量は0.079L-ガス/L-下水であり,安定したガス生成を示した.また除去 COD(CODrem)あたりの汚泥生成量を求めた.嫌気性MBR法における汚泥生成量は,高負荷条件下または,低温条件下であっても従来の下水処理プロセスで発生する汚泥量以下であった.

  • Hideaki NAGARE, Takumi IWATA, Ayako EBI, Satoshi AKAO, Morihiro MAEDA, ...
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_181-III_187
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     This paper reports the recovery of phosphorus and potassium from biomass aiming at removing accumulated nutrients in soil in agriculture and to reuse them. At first, the thermodynamic properties were determined for precipitate which contains phosphorus and potassium together in pure chemical solution. The precipitate formed had K:Mg:P ratio of 1:1:1, but different crystalline structure from struvite-K reported so far. The solubility product, ΔrG°, ΔrH° of dissolution reaction of the precipitate were 10−10.9, −62.4 and −23.0 kJ/mol, respectively. Then, a method to recover P and K from biomass was proposed. The experiment demonstrated that those elements were recovered when KCl solution was used as the initial extraction solvent.

  • Vu Duc CANH, Hiroaki FURUMAI, Hiroyuki KATAYAMA
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_189-III_196
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     It is important to determine the infectivity of viruses in waters and foodstuffs so that the risk of viral infection can be assessed. The use of viability markers such as propidium monoazide (PMA), ethidium monoazide (EMA) and more recently cis-dichlorodiammineplatinum (CDDP) has been applied to discriminate between infectious and inactivated viruses by (RT-)qPCR (viability (RT-)qPCR). However, the efficiency of viability (RT-)qPCR in eliminating inactivated viruses can be influenced by viral genome property. The main objective of this study is to evaluate the effects of viral genome types and amplicon lengths on the efficiency of viability (RT-)qPCR. Naked viral genomes extracted from RNA or DNA viruses were treated with PMA (100 µM), EMA (100 µM) or CDDP (1, 000 µM) markers and analyzed by (RT-)qPCR. Among viability markers tested, CDDP was the most effective to remove the detection of the naked viral genomes by (RT)-qPCR. All viability markers tested generally eliminated (RT-)qPCR detections of RNA viral genomes more effectively than those of DNA viral genomes. PMA/EMA/CDDP-(RT-)qPCR was likely to remove the naked viral genomes more efficiently when targeted the longer amplicon lengths than the shorter ones. Thus, the property of viral genomes should be considered as one of the governing factors on the efficiency of viability (RT-)qPCR in exclusion of inactivated viruses.

  • Hongwei ZHANG, Shuhei TANAKA, Wataru TAKAMI, Masaki WATABE, Yasuhiro O ...
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_197-III_204
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     This study aims at applying a survey method to offer the presence and coverage of each plant species in field area, so as to develop quantitative evaluation procedure for vegetation structure and diversity. Long-term monitoring surveys and vegetation surveys have been implemented in Harie wetland which is a habitat supporting a large number of rare plant species in Japan from 2011 to 2019. Main results are as follows: 1) vegetation surveys with portable point positioning GPS devices were able to provide the presence and proportion of each species in communities, along with the expansion of Ludwigia grandiflora. 2) Shannon-Wiener diversity index 𝐻 without distinguishing species categories, did not reflect the real abundance change. 3) the evaluation method with periodization presented vegetation diversity with emphasis on various significance is suitable to evaluate the effects of Ludwigia grandiflora on rare species and endemic species.

  • Koki NAMOTO, Takashi HASHIMOTO, Shinobu KAZAMA, Kumiko OGUMA, Satoshi ...
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_205-III_214
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     Loss of membrane integrity causes deterioration of treated water quality and poses increased risk of microbial diseases. Although there have been several integrity testing methods applied to the full-scale membrane treatment plants, water flow in broken membrane has not been elucidated based on experimental studies. Therefore, this study aimed to directly measure the bypass flow and filtration flow using a novel particle counting method. Nanoparticles greater than the pore size of hollow fiber membrane, but smaller than the inner diameter was suspended to the feed water and both particles deposited on the membrane as a parameter of flux, and the particle in the permeate were measures by the SEM imaging combined with the computer-aided particle conting method, which was verified to be highly accurate. About 0.98% of nanoparticles filtered through the membrane was attached on the membrane, and there was a log-linear relationship between the numbers of particles filtered and the numbers of particles attached on the membrane. The filtration flow was about 20% of the flow rate from the broken end of the membrane, which was about 35% less than the estimated flow by the conventional method. This result indicated that the actual decreases of the log reduction values of the broken membranes are slightly smaller than the ones estimated from the conventional method. The filtration flux from the intact segments of the broken membrane was the lowest at the broken end, and increased along with the length of the membrane to the middle, but the slightly decreased to the outlet, which was considered to be complex flow within the broken hollow fiber membrane.

  • 古市 昌浩, 西村 修, 山崎 宏史
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_215-III_225
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     現在海外で普及している分散型汚水処理施設のセプティックタンクと今後普及が期待されるEU型小規模汚水処理施設,日本で開発された浄化槽の海外適用品および集合型汚水処理施設の下水道を対象に,放流汚濁負荷量,汚泥排出量と温室効果ガス排出量に関する比較検討を行った.その結果,分散型汚水処理施設の普及においては,放流汚濁負荷削減の観点ではセプティックタンクから窒素除去機能を有する施設への転換が急務であり,汚泥排出量抑制に関しては除去BOD量当たりの汚泥排出量が少ない浄化槽の海外適用品が有用であった.温室効果ガス排出量は,施設の小規模化に伴い集合型と分散型の排出量の差が減少し,処理対象人口150人以下では浄化槽の海外適用品を含む小規模分散型汚水処理施設の排出量が集合型下水道を下回った.

  • 杉山 徹, 山川 むつみ, 高橋 威胤, 羽深 昭, 木村 克輝
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_227-III_234
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     都市下水中に含まれる有機物は新たなエネルギー源として見なすことができる.しかし,下水中からのエネルギー回収に必要なプロセスである嫌気性消化を直接適用するためには,有機物を濃縮する必要がある.下水を直接膜ろ過し,有機物を濃縮することで嫌気性消化の適用は容易となり下水からのエネルギー回収量を大幅に増加させることができる.しかし,膜ファウリングの発生と透過水中の有機物濃度の高さが課題となる.本研究では,下水直接膜ろ過の前処理としてスポンジ担体を用いた生物膜処理を導入し,ファウリング抑制効果と膜透過水中有機物濃度の低減を試みた.生物膜処理において,HRTとDOを変化させることにより有機物除去を調節し,回収可能となる有機物量(流入下水中有機物の約75%)を維持したまま膜透過水中有機物濃度を低減させることができた.低水温期(10.9-12.6℃)に実施した実験では,前処理による膜ファウリング発生は抑制された.水温が上昇した(13.9-16.8℃)期間に実施した実験では微生物活動が活性化し,前処理を導入した系列ではバイオポリマーに起因すると考えられる膜ファウリングの発生が顕著になった.一方で水温上昇時に前処理を導入した系列では,膜透過水中のBOD濃度は約7 mg/Lとなり,従来の下水処理法と同程度のBOD濃度となった.

  • 山崎 宏史, 馬 榕, 蛯江 美孝, 稲村 成昭, 西村 修
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_235-III_242
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     我が国の小型浄化槽における処理水質は季節により変化するが,必ずしも処理水採水時の水温に比例して処理水質は変化しないことがわかってきている.そこで本研究では,浄化槽の処理性能に及ぼす水温の影響を調べるために,処理水採水時の水温の他,過去の水温(水温履歴)も考慮に入れることにより,その影響を解析した.その結果,汚泥貯留部のスカム量変化と共に,処理水BOD,T-N濃度等は,処理水採水時の水温だけでなく,過去4~6ヵ月の水温履歴にも影響を受けていると考えらえた.これらの現象から,小型浄化槽は槽内に汚泥を貯留する機能を有するために,水温履歴に応じた貯留汚泥の可溶化により,後段への負荷量が変化し,処理水質にも影響を及ぼしていると考えられた.そのため,小型浄化槽では,各水温における汚泥可溶化量と浄化量の差が処理水質に影響を及ぼすと考えられた.

  • 塩原 拓実, 蛯江 美孝, 柿木 明紘, 山崎 宏史
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_243-III_250
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     現在,浄化槽の最終工程では塩素消毒がなされているが,その塩素による放流先での影響が懸念されている.近年,UV-LEDが開発されたことから,小型浄化槽への適用について検討を行った.本研究では,浄化槽処理水に含まれる大腸菌群,大腸菌,腸球菌の3種の衛生指標生物を対象に,UV-LEDによる不活化効果の検討を行った.その結果,3種の衛生指標生物ともUV照射量の増加と共に不活化効果は増大するが,その効果には相違があり,特に腸球菌に関しては,大腸菌群,大腸菌より不活化効果は低かった.また,浄化槽槽内水におけるBOD濃度と280nmの吸光度は正の相関を示したことから,UV照射前の処理工程にてBOD濃度を低減することや消毒槽の水深を浅くすることは,UV照射効率が向上するため,浄化槽処理水へUV-LEDを適用する上で重要な因子の1つであると考えられた.

  • 村上 明, 増田 貴則, 高部 祐剛
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_251-III_259
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     閉鎖循環式養殖システムにおいて,循環率,換水周期,換水率を低下させたことによる省コスト運転の事業性と環境負荷の評価を目的とし,2週間の飼育実験を行った.結果として,増肉係数とストレスには影響は見られなかった.この結果を踏まえて,コスト計算を行ったところ,循環ポンプ代,貯水槽の水温調節器,貯水槽,循環ポンプと貯水槽の水温調節器のランニングコスト,排水処理代,人件費,飼育水代において合計で867円/kgコスト削減できる可能性が示された.硝酸態窒素量,排水量についてもそれぞれ,0~13.6%,14.7~20.1%の削減ができる可能性が示された.以上より,循環率,換水周期,換水率を低下させた場合でも,事業性は向上でき,排水による環境負荷が軽減できる可能性が示された.

  • 杉原 幸樹, 管原 庄吾, 増木 新吾
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_261-III_267
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     塩淡二層汽水湖の網走湖で塩水層の貧酸素解消を目的に,実水域で酸素溶解装置(WEP)の運用試験を行った.2ヶ月の装置運転でおよそ210,000m2に酸素供給影響が確認された.一方で残存酸素量は装置の運転時間と含有硫化水素濃度に依存して,水塊移動と供給酸素濃度が重要であることが確認された.また装置の筐体耐久度も強還元状態の水中においては,2カ年ほどで破損を生じることが確認された.これらの知見から本論文の条件では運転費用に加え,2年おきの保守修繕費が必要となり,年間の維持費用として390~550万円が必要であることが明らかとなった.このことから,溶存酸素供給によって塩水性貧酸素水塊の水質改善が可能であるが,社会実装のためには隔離水塊等の有限容量での運用が有利であると推察された.

  • 藤井 雄太, 三塚 和弘, 佐藤 祐輔, 緒方 浩基, 井上 大介, 池 道彦
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_269-III_276
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     クロロエチレン類汚染地下水の生物学的浄化におけるグルコン酸の水素供与体としての利用可能性を検証するため,グルコン酸を主成分とする薬剤を用い,クロロエチレン類(トリクロロエチレン,cis-1, 2-ジクロロエチレン,クロロエチレン)汚染地下水の浄化実証試験を行った.その結果,2度の薬剤注入により,620日で全てのクロロエチレン類を地下水環境基準以下まで低下させることができ,グルコン酸がクロロエチレン類脱塩素化の水素供与体として有効であることが確認された.また,グルコン酸の注入が地下水質に与える影響は一時的であることも示された.クロロエチレン類脱塩素化に用いられる他の水素供与体と比較すると,グルコン酸はコスト,浄化速度,効果の持続性において優位性を有する可能性があり,有望な水素供与体であると結論付けられた.

  • Khaing Khaing Soe, Shinobu KAZAMA, Satoshi TAKIZAWA
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_277-III_285
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     High rates of non-revenue water (NRW) are the main obstacle against improvements of water utility management in many Asian cities. Yangon City, Myanmar, has a high NRW rate of ca. 60%. Previously billed-unmetered consumption, which is often caused by damaged water meters, was classified to revenue water by International Water Association, but later it was redefined as non-recovered revenue water. Although billed-unmetered consumption could cause a significant revenue loss if there is a large discrepancy between billed and real water consumption, there has been no report of estimating the amounts of billed-unmetered consumption in Asian cities including Yangon. Therefore, this study aimed to estimate the revenue increase by replacing damaged water meters with new meters, and thereby to estimate the factors influencing water consumption. The water consumption in three townships with large or ordinary houses were measured on site and the water consumption before and after meter replacement was measured in a pilot study area. The water consumption per connection was influenced by the number of persons per house, but the per-capita consumption was significantly greater and varied in the large houses than the ordinary houses due to non-essential water consumption such as watering gardens and filling swimming pools at the fixed rates of water bills. After water meter replacement, the revenue increased by 2.6 times or 1.8 times in large or ordinary houses, respectively. Thus, the cost of meter replacement could be recovered in eight or 25 months for large and ordinary houses, respectively. Therefore, it was found that, despite limited budget of water utilities and rules of private ownership of water meters, it is recommended to replace water meters to increase their revenue and to save non-essential water consumption by raising the awareness of the consumers through sending bills of their real water consumption.

  • Ho Nhut LINH, Teppei KOMIYA, Hirofumi NAKAYAMA, Takayuki SHIMAOKA
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_287-III_298
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     This study is the first effort to depict the situation of solid waste landfill management in Vietnam. A comprehensive-nationwide-survey was conducted at 13 Vietnamese landfill sites in 2018 to clarify problems of landfill sites under impacts of heavy rain. The survey started with an overview of the landfill management situation along with investigation of the potential contamination of landfill leachate by computing the leachate pollution index (LPI). As a result, owing to the inadequate management of the facilities and high LPI value, the occurrence of heavy rain potentially induces the overload of leachate through its infiltration into landfill body leading it to pose risks to environment. Additionally, the actual incidents caused by heavy rain and the existing strategy to tackle the problems were reported. Based on this, we proposed suggestions to contribute to dealing with heavy rain events ahead. Landfill No. 8 with high leachate monitoring frequency system, provided 5-year leachate monitoring data (2013-2017). Statistical analysis applied on this data set showed a significant relationship between cumulative rainfall and leachate component concentration. The 2013-2015 period showed a negative correlation between rainfall and COD concentration, whereas the 2016-2017 period depicted a positive correlation between them. This can be explained by the starting of a new cell in the landfill to accept wastes in the 2016-2017 period. The remaining leachate components (BOD5, TN, NH4+-N, and Cl-) had weaker correlation with rainfall compared to COD. Welch t-test was used to further investigate the impacts of heavy rain intensities on leachate component concentration. Results indicated that the impact of heavy rain intensity on COD, Cl- (2013-2015) and COD, BOD5 (2016-2017) has statistical significance.

  • Caterina CACCIATORI, Takashi HASHIMOTO, Satoshi TAKIZAWA
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_299-III_309
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     Previous models of membrane filtration processes required simplification of the membrane structures; thus, it was difficult to characterize the actual porous membranes. Therefore, this study aimed to develop a model that can delineate features of the actual porous membranes and deposited particles. Convolutional neural networks (CNN) were used as the architecture of the deep-learning models developed in this study. After tuning hyperparameters, the CNN models were able to classify the SEM images of polyvinylidene difluoride (PVDF) flat sheet membranes of different pore sizes, i.e. 0.1 µm and 0.45 µm, with high accuracy. The accuracy improved with the epoch size and reached the 100% accuracy after 50 epochs. The CNN model was modified and applied to classification of 0.45 µm pore-sized membranes filtered with feed waters containing 2, 5 and 8 mg/L of nanoparticles. Although the overall classification accuracy was 93%, the classification of 2 and 5 mg/L was less accurate (84% and 88%, respectively) due to small differences of particles deposited on the membranes. The heatmaps of the membranes were drawn by gradient class activation mapping (Grad-CAM) of the CNN models. The Grad-CAM heatmaps output by the CNN model with a kernel size of 3x3 was able to clearly extract detailed features of the membranes, such as aggregates of PVDF spherical crystalline structures and aggregates of particles deposited on the membranes, whereas a 7x7 model featured wide areas including deep pores, top and intermediate layers. Thus, it was found that the CNN models can extract the features of both intact and fouled membranes without any simplification of the membrane structures. By adjusting the model structure, the kernel size and epochs, the CNN models can be used for feature extraction and comparison of different membranes and for improving our understandings of membrane fouling processes.

  • 赤尾 聡史, 川崎 向日葵, 野村 洋平, 藤原 拓
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_311-III_318
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     養液栽培で使用される有機培地の代替材に関する検討を行った.農業地域で大量に発生する作物残渣(ナスの茎葉)を代替材候補とし,抽出操作により植物生育に阻害となる成分を除去する方法を検討した.ナス作物残渣抽出液のHPLC分析から,水,メタノール,エタノールおよびアセトンではポリフェノールと推定される物質が抽出された.抽出液を用いたミニトマト発芽試験では,メタノール抽出液が顕著な発芽・成長遅延を示した.アセトン抽出,続いて水洗浄を施したナス作物残渣をミニトマト栽培試験(成長初期段階,栽培日数33日間)に供したところ,培地形状の最適化を行っていない(粗破砕の作物残渣)にも拘わらず,一般的な培地であるロックウールと同等の成長を示した.溶媒抽出により作物残渣が有機培地として使用できる可能性を示した.

  • 古橋 康弘, 原 宏江, 長谷川 浩, 本多 了
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_319-III_326
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     廃蛍光体からレアメタルを選択的に回収するために, 微細藻類Actodesmus acuminatusを用いたバイオソープションの導入を想定し, 市販発光ダイオード(LED)用3波形蛍光体酸溶出液をサンプルとして微細藻類A. acuminatusによる吸着実験を行なった. その結果, レアアースであるユウロピウムより高濃度で共存するアルミニウムやカルシウムによってユウロピウムの吸着は阻害された. また吸着材としての生存藻体はアルミニウム, ガリウムとイットリウムに対する複合的な吸着機構を有することが明らかになった. さらに生存藻体をオートクレーブ処理によって不活化した藻体を吸着材として用いることで, レアアースであるイットリウムを残留させたまま, 共存金属であるガリウムやアルミニウムのみが吸着された. また溶液中の錯体化した金属に対しては細胞表面における化学吸着のみが起こり, 液相中の濃度が高い金属が優先的に吸着された.

  • 福嶋 俊貴
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_327-III_335
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     オープンデータを活用し,下水処理場シミュレータを利用して下水処理場の栄養塩類供給機能(能動的管理)をエネルギー回収機能と併せ,そのポテンシャルを総合的に評価した.季節別運転の対象となる冬場の運転実績データを利用しての試算によると,脱窒抑制運転では処理水硝酸性窒素(NO3-N)は10~13mg/Lに増加し窒素供給量は62%の増加となっていた.硝化抑制運転では処理水アンモニア性窒素(NH4-N)は12~15mg/L に増加し窒素供給量は85%の増加となっていた.使用電力量は脱窒抑制運転では増加するものの,硝化抑制運転では減少していた.「常時硝化抑制+ウキクサ培養」という能動的管理手法では,窒素回収率70%の条件で,冬場には16~20mg/Lの窒素が供給でき,年間放流負荷量から計算した放流水窒素濃度は5.3mg/Lであった.一方,発電量は年間平均値で39,670kWh/日となり電力自給率104%と年間でも電力自立可能と試算された.

  • 前田 稜太, 川添 未裕, 大池 達矢, 野口 太郎, 幡本 将史, 牧 慎也, 山口 隆司, 黒田 恭平
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_337-III_348
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,緑色凝灰岩が多孔質且つミネラルを豊富に含む点に着目し,緑色凝灰岩の加工廃材を用いたミニトマトとニンジンの栽培試験と土壌の化学性,生物性への影響評価を行った.栽培試験の結果,緑色凝灰岩施用区ではミニトマトの収量とニンジンの根長が有意に増加した(p<0.05).土壌化学分析の結果,ミニトマト栽培では緑色凝灰岩施用によりNO3-–N濃度とCaO濃度が有意に増加した(p<0.05).16S rRNA遺伝子に基づいた微生物群集構造解析の結果,ミニトマトとニンジンの栽培試験において,緑色凝灰岩施用が検出率0.11%以下のマイナーな微生物群集構造形成に影響を与えることが示唆され,ニンジン栽培では緑色凝灰岩無施用区で土壌劣化を示すKoribacteraceae科が有意に増加した(p<0.05).

  • 田中 周平, 大島 靖弘, 長谷川 達朗, 高見 航, Zhang Hongwei , 渡部 優希, 田淵 智弥, 西川 博章, 藤井 滋穂
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_349-III_354
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,特定外来生物オオバナミズキンバイの茎断片からの再生に及ぼす影響要因を把握することを主目的とした.琵琶湖岸矢橋地区で単独測位携帯型GPSによる生育分布調査を行った結果,オオバナミズキンバイの植生面積は2014年冬に49,569m2であり,重機による大規模な駆除の後,2015年冬に136,198m2に拡大していた.そこで,室内における茎断片からの再生実験を計240試料(節,栄養塩,茎長,茎径別)で実施した結果,節の有無が再生の主要因であった.節ありの試料について栄養塩,茎長,茎径による3元配置分散分析を行った結果,茎径の寄与率が37.7%であり,再生に大きく影響していた.分散分析を経過日数別のデータを対象に実施した結果,培養開始2日目には栄養塩有りの試料で生長倍率が高い傾向が示され,栄養塩は生長初期段階で寄与することが分かった.

  • 柳 洋平, 関根 雅彦, 神野 有生, 松田 幸祐
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_355-III_360
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     中小河川ではヨシなどの草本過剰繁茂による流下能力低下や景観悪化が問題となっており,水理的因子による制御は容易ではない.本研究では過剰繁茂を制御する因子として日射量に着目した.ヨシが繁茂する小河川の砂州上に異なる遮光率の寒冷紗を設置した日射遮蔽実験より,遮光率が高いほどヨシの草丈が小さくなること,遮光率が76%を超えるとヨシの密度がやや減少すること,遮光率76%を超えると増水時にヨシが倒伏しやすくなり,94%ではほとんど全てのヨシが倒伏することが判明した.また同河川のヨシ被覆率調査と日射量解析より,河道周辺の樹木などによる天空開放率に地形的な要因で定まる直達日射率を加えることでヨシ被覆率の多くを説明できることが判明した.以上より,実河川でも日射遮蔽がヨシの繁茂を制限している場合があることが実証され,日射遮蔽によるヨシの繁茂制御の可能性が示された.

  • 長濱 祐美, 丸尾 知佳子, 福島 武彦, 野村 宗弘, 西村 修
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_361-III_366
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     夏季に発生したMicrocystis属を主とするアオコは,秋季には沈降し,底泥上に堆積する.そこで,炭素・窒素安定同位体でラベリングしたMicrocystis属を用い,沈降・堆積後の特性ならびに底生動物の利用可能性について検討した.その結果,Microcystis属は再懸濁した底泥とともに速やかに沈降した.底泥と混合することで分解速度が上昇したが,底泥中のMicrocystis属由来有機物は,デトリタスまたは従属栄養細菌等の生物体として底泥中にとどまっていると示された.また,Microcystis属分解物を含む底泥を給餌した結果,底生動物3種類(ユスリカ科幼虫,ドブガイ類,マシジミ)すべてでMicrocystis属由来有機物を摂餌したと示された.Microcystis属混合後の培養期間が異なる二種類の泥を給餌したところ,ユスリカ科幼虫とマシジミは,培養期間の長い泥と短い泥で同化効率が異なっていたと示唆された.

  • 渡邉 俊介, 大隈 一輝, PODIAPEN Tannen Naythen , 藤林 恵, 井芹 寧, 郝 愛民, 久場 隆広
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_367-III_373
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     アオコ防除技術へ適用するための基礎的知見を得るため, アオコを形成するシアノバクテリアMicrocystis aeruginosaと競争関係にある珪藻Nitzschia paleaに着目し, N. paleaの増殖に与える栄養塩濃度, 水温, pHの影響を検討した. N. paleaの窒素における最大比増殖速度𝜇𝑚𝑎𝑥及び半飽和定数𝐾𝑁は, それぞれ0.52 day-1, 0.12 mgN L-1であった. リンにおける𝜇𝑚𝑎𝑥及び𝐾𝑃は, それぞれ0.62 day-1, 0.035 mgP L-1であった. 珪素における𝜇𝑚𝑎𝑥及び𝐾𝑆𝑖は, それぞれ0.68 day-1, 0.48 mgSi L-1であった. N. paleaの至適温度は15~25 ℃付近であったが, アオコが発生する夏季の水温を想定した30 ℃においても活発に増殖した. また, pHの至適条件はpH 7.0~9.0であり, アルカリ性においても増殖したことから, N. paleaはアルカリ性の水域で発生しているアオコの増殖を抑制するために利用できると考えられる.

  • 木村 建貴, 香西 直文, 坂本 文徳, 福谷 哲, 池上 麻衣子
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_375-III_382
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     粘土鉱物に吸着したセシウムの一部が微生物の作用により溶出することが明らかになってきている.一般的に植物は微生物と共生関係を築くが,粘土鉱物からのセシウム溶出に係る植物と微生物間における相乗効果は報告されていない.本研究では,植物由来の有機酸に着目し,まず植物(シロツメクサ)が生産する有機酸分析を行った.次に,シロツメクサ由来として同定された乳酸を用いて,微生物の培養実験を黒雲母存在下で行った.その結果,増殖の誘導期において黒雲母から溶出した鉄等の量が乳酸の添加により増大した.また,セシウムを吸着させた黒雲母からセシウムが溶出した.これは黒雲母が部分的に溶解したことに伴い吸着していたセシウムが溶出したと考えられる.また,溶出したセシウムは,増殖した微生物に吸収されたことが示唆される.

  • 山田 真義, 山内 正仁, 黒田 恭平, 宮原 将志, 原田 隆大, 園田 寛人, 片平 智仁, 丁子 哲治, 山口 隆司
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_383-III_392
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     硫黄山噴火の影響を受ける河川の汚染実態を把握し,火山噴出物に暴露された河川底泥の環境サンプルから微生物群集遺伝情報の収集・解析を行い,噴火の影響を受けた河川の実態調査を行った.その結果,河川水質は概ね環境基準を満たしていたが,硫黄山火口から約2kmに位置する採水地点(えびの橋)のpHは環境基準値範囲外であった.えびの橋上流とえびの橋の種多様性は最下流の湯田橋(11月)と比較して8.4〜18.6%,系統学的多様性が18.5〜27.5%と著しく低い多様性を示し,えびの橋付近では火山噴出物の影響により特定の微生物群が集積されていることが示唆された.また,噴火以前から直接水稲栽培に利用されていないが,川内川水系の水稲栽培などの営農活動に影響を及ぼした硫黄山噴気孔近くのえびの橋から採水した河川水を用いて,火山噴出物に含まれる成分が水稲栽培に与える影響をポット試験で調査した.その結果,2018年度の玄米中の総As量は試験区2(10倍希釈水)で0.40±0.11mg/kgであり,試料によってはCodex基準値(0.35mg/kg)と同等,それ以上の無機ヒ素を含む可能性があると考えられた.

  • 土手 裕, 伊藤 健一, 関戸 知雄, 尾花 誠一, 藤井 真吾
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_393-III_401
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究ではMgO系不溶化材による火山噴出物由来河川堆積物の不溶化処理効果について評価することを目的として,堆積物の不溶化処理,pH依存性試験,逐次抽出試験を行った.堆積物からBやAsなどの有害重金属等が土壌環境基準を大きく超える濃度で溶出した.堆積物をMgO系不溶化材で処理した結果,添加率の増加と共にpHは増加し,添加率10%でpHは8.0〜10.0に達した.添加率6%で全ての試料について全ての元素の溶出濃度を土壌環境基準値以下にすることができた.CdとFについては,pH2の強酸性でも不溶化効果が認められたが,B,As,T-Cr,PbについてはpH7以下では不溶化効果が低いことが分かった.火山噴出物由来河川堆積物をMgO不溶化材で処理した場合のAs, Bの不溶化メカニズムは,MgO, Mg(OH)2,Fe(OH)3への吸着である可能性が示唆された.

  • 池上 麻衣子, 黒木 健臣, 福谷 哲, 米田 稔
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_403-III_410
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
    ジャーナル フリー

     粘土鉱物は加熱とともに吸着水,層間水などの脱水や粘土鉱物の分解,再結晶などが起こる.CsやSrは粘土鉱物に吸着するが,元素によってその挙動や強さが異なる.本研究では,粘土鉱物に熱処理を行い,粘土鉱物の構造変化がCs,Sr溶出特性に及ぼす影響について検討を行った.XRD測定では,熱処理を行ったカオリナイト,ディッカイト,モンモリロナイト,ハイドロバイオタイトで強度ピークが消滅したり,新たに生成するなど顕著な変化が見られた.CECにも変化があり,ほとんどの粘土鉱物が減少したのに対して,増加する粘土鉱物も見られた.熱処理した粘土鉱物中のCs溶出率は温度とともに減少し,Sr溶出率は温度によって増加する粘土鉱物があった.熱処理によって粘土鉱物の物理的,化学的特性に変化が生じ,これらの変化がCs,Sr溶出に影響を与えていることがわかった.

  • 鈴木 元彬, Chomphunut POOPIPATTANA , 古米 弘明
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_411-III_421
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
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     流入下水由来の3種類の指標細菌類(大腸菌,糞便性大腸菌群,腸球菌)と2種類のウイルス指標(F特異大腸菌ファージ,体表面吸着ファージ)について,塩分と太陽光による不活化影響を室内実験により調べたところ,F特異大腸菌ファージのみが塩分と太陽光(塩分影響下),大腸菌,糞便性大腸菌群,腸球菌が太陽光による不活化の影響を受けることが認められた.塩分影響下での太陽光による不活化影響の大きさは,大腸菌>糞便性大腸菌群>腸球菌>F特異大腸菌ファージの順であった.一方で体表面吸着ファージはこれらによる不活化影響は認められなかった.大腸菌,糞便性大腸菌群は塩分と太陽光による交互作用も確認された.指標ごとに塩分や太陽光による不活化影響が異なることから,糞便汚染の把握において複合して指標を測定する意義が示唆された.

  • 鳥居 将太郎, 片山 浩之
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_423-III_429
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
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     ウイルスの遊離塩素耐性は水質に依存し,不活化に必要なCT値が水温,pHごとに定められてきた.近年,同じウイルス種内でも塩素耐性に違いがあることが示された.本研究は,高耐性株の存在が実際の浄水の塩素処理効率に及ぼす影響を評価することを目的とした.多摩川,相模川のF特異RNA大腸菌ファージGI型の塩素耐性を評価し,同種内の遊離塩素耐性のばらつきを考慮した不活化モデルを作成した.GI型野生株の86%(30/35株)で,実験室株MS2, frより塩素耐性が高かった.また,MS2の8 log不活化が期待できるCT値では,GI型野生株の全体不活化率が,5.3-5.6 logにとどまると算定された.環境水中におけるウイルスの消毒効果の推測では,実験室株によって代替するのではなく,種内の遊離塩素耐性のばらつきを算入した不活化モデルを採用すべきである.

  • 杉江 由規, 井原 賢, 馬 緻宇, 田中 宏明
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_431-III_440
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
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     本研究では畜産活動を含む流域で排出された薬剤耐性大腸菌の水環境中への伝播について明らかにするため,滋賀県の野洲川,日野川において降雨時と非降雨時に大腸菌と薬剤耐性大腸菌の存在実態調査を複数地点で行った.降雨時の出水が河川水中の大腸菌数および薬剤耐性大腸菌数の増加に影響を及ぼすことが示唆されたため,野洲川の流量測定点で出水時に,連続的な調査を行った.その結果,1)大腸菌数も薬剤耐性大腸菌数も降雨によって明確に増加すること,2)大腸菌およびアンピシリン耐性大腸菌とテトラサイクリン耐性大腸菌とでは,降雨時の流出特性が異なり,それらの由来と水環境中への流出機構が異なる可能性があること,3)野洲川における河川流量(Q)大腸菌,薬剤耐性大腸菌の負荷量(L)の関係を実測データに基づいて初めて明らかにした.

  • 西田 光希, 張 浩然, 井原 賢, 田中 宏明
    2020 年 76 巻 7 号 p. III_441-III_448
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/17
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     下水処理場では合流式だけでなく分流式においても,雨天時に簡易処理放流が発生していることが明らかになってきており,簡易処理放流に伴う病原微生物の水域への排出が懸念されるが,その実態はほとんど報告されていない.本研究では,生物処理施設と高速凝集沈殿処理施設を有している下水処理場において,雨天時と晴天時にそれぞれ大腸菌とF特異大腸菌ファージ(F-phage)の濃度を測定し,下水処理場から排出される年間負荷量を推定した.具体的には微生物の濃度Cと流量Qから微生物の負荷量Lを算出し,L-Q解析法によって推定した.結果は雨天時に排出される微生物負荷量が,大腸菌・F-phageともに半分以上を占める結果となった.また大腸菌の雨天時負荷量の大半は,簡易処理放流によるものであることも判明した.

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