2020 年 76 巻 7 号 p. III_431-III_440
本研究では畜産活動を含む流域で排出された薬剤耐性大腸菌の水環境中への伝播について明らかにするため,滋賀県の野洲川,日野川において降雨時と非降雨時に大腸菌と薬剤耐性大腸菌の存在実態調査を複数地点で行った.降雨時の出水が河川水中の大腸菌数および薬剤耐性大腸菌数の増加に影響を及ぼすことが示唆されたため,野洲川の流量測定点で出水時に,連続的な調査を行った.その結果,1)大腸菌数も薬剤耐性大腸菌数も降雨によって明確に増加すること,2)大腸菌およびアンピシリン耐性大腸菌とテトラサイクリン耐性大腸菌とでは,降雨時の流出特性が異なり,それらの由来と水環境中への流出機構が異なる可能性があること,3)野洲川における河川流量(Q)大腸菌,薬剤耐性大腸菌の負荷量(L)の関係を実測データに基づいて初めて明らかにした.