2020 年 76 巻 7 号 p. III_449-III_460
環境水中における病原体の自然死滅モデルは,環境水の利用における微生物学的安全性の予測的管理に必要である.本研究では,多様な環境条件下にある環境水中において適用可能なウイルス自然死滅モデルの構築を試みた.系統的文献検索により収集した水質条件とウイルス不活化速度のデータセットにスパース推定法を適用することで説明変数の選択を行なった.その結果,環境水中のウイルス不活化速度定数は,ウイルス初期濃度,アルカリ性側pH,酸性側pHの二乗項,及び水温の二乗項の関数として表された.さらに,階層ベイズ推定法を適用し,任意の水質条件におけるウイルス濃度の経時変化を推定した.構築したモデルの検証実験をエンテロウイルスを用いて行ったところ,ウイルス濃度は予測値の95%信用区間内に収まることが示された.