2021 年 77 巻 5 号 p. I_155-I_166
近年,地球温暖化に伴い,100mm/hを超える突発的な集中豪雨が多発しており,洪水氾濫のリスクの高まりが指摘されている.国内の一級河川では最近数十年に植物の繁茂による河道の環境変化が進んでおり,粗度の増加や河道の縮小といった流下機能の低下が懸念されている.環境と防災という,異なる2つの目的を満足する適切な伐採計画を作成するには,バイオマス量の経年変化を把握し,その効果を十分に議論する必要があるが堤外地のバイオマス量を対象とした長期の変遷データは存在しない.そこで,本研究では衛星画像を用いた長期(約30年)のバイオマス量変化の推定を目的とした.採取した植生サンプルと正規化植生指標からバイオマス量(草地)および分布域(樹林)を推定することで,これらの議論のベースとなる堤外地の長期バイオマス量変化を定量化した結果,対象とした3河川全てにおいて増加傾向にあることが分かった.