2021 年 77 巻 5 号 p. I_243-I_249
気候変動に伴う海面上昇等は沿岸域に大きな影響を及ぼすため,適応策の策定・実施に向けてその社会経済評価は必須である.本研究では,日本沿岸域を対象として,海面上昇と潮汐による各都道府県の潜在的な浸水面積,影響人口,浸水被害額といった浸水影響を定量化した.最新の気候シナリオ,潮汐データ,社会経済シナリオ(SSP)を活用して,日本沿岸域の海面上昇と浸水影響を3次メッシュ(1km)の解像度で全国一律に評価したことが特徴である.その結果,代表的濃度経路のうちRCP8.5における全国の潜在的浸水面積は,2050年に約2,127km2,2100年に約2,598km2になると推計された.影響人口は2050年に約461万人-551万人(SSP1-5),2100年に約253万人-565万人(SSP1-5)となり,浸水被害額は2050年に約400億US$-644億US$(SSP1-5),2100年に約580億US$-1,850億US$(SSP1-5)と推計された.さらに,人口の密集する都市部や地形条件など,都道府県沿岸の特徴についても検証した.