2021 年 77 巻 5 号 p. I_331-I_339
本研究は,一般家庭を対象にした質問紙調査により,住宅に対する住民評価の影響要因を特定した.質問紙調査の回答に共分散構造分析を実施した結果,住宅に対する住民評価に最も影響を与える要因は住宅の居住環境に対する評価であること,省エネによる個人への便益や住居費の経済性に対する評価も有意に影響を与えていることが明らかとなった.多母集団同時分析の結果,賃貸集合住宅の世帯は持ち家一戸建世帯よりも住居費の経済性を重視していること,省エネ意識が高い世帯は省エネによる個人への便益ではなく,省エネによる社会貢献が住宅に対する住民評価に影響を与えることが確認された.住宅を購入・賃借する世帯に事前に簡単な口頭確認を実施し,省エネ意識を確認した上で適切な広報戦略を選択することが,省エネ住宅の普及促進に繋がると言える.