2022 年 78 巻 5 号 p. I_451-I_461
温室効果ガスネットゼロ排出の達成に際して,電化が困難な分野でいかに排出削減を実施するかが課題とされている.近年,こうした分野で水素と大気中より回収したCO2から製造した合成燃料の有効性が指摘されている.本研究では全世界を対象に,エネルギーシステムモデルを用いて2050年ネットゼロ排出シナリオにおける合成燃料の役割を定量的に評価することを目的とした.その結果,ゼロ排出目標を達成するシナリオで,特に液体燃料の需要が存在する運輸部門を中心に合成燃料の導入が進み,合成燃料が重要な低炭素エネルギーキャリアとなりうることがわかった.また,合成燃料の導入により,電化・水素利用技術のシェアの急激な上昇が低減され,既存のインフラ・最終消費側技術を部分的に維持したまま排出削減を可能にする効果が明らかとなった.