2022 年 78 巻 5 号 p. I_463-I_471
世界の温室効果ガス(GHG)のネットゼロ排出の達成において,非二酸化炭素の排出をもたらす農畜産業部門における排出削減が重要な役割を果たすと報告されている.近年では農畜産物の生産側のみならず,その消費側での対策についても提案がなされていることから,本研究では世界全体で農畜産業部門における生産側に加えて,消費側の対策である畜産物の消費制限を考慮した場合の温室効果ガス削減可能量と削減に伴う費用の推計を行った.その結果,2050年における世界全体での農畜産部門のGHG排出削減率は生産側のみを考慮したシナリオで50.2%(対策なしシナリオ比)に対し,生産と消費側両方を考慮したシナリオで69.9%(対策なしシナリオ比)となった.このことは農畜産物の消費側における取組みが20%(対策なしシナリオ比)追加的に排出削減をもたらし,ネットゼロの達成において重要な役割を果たすことを示唆している.