2022 年 78 巻 6 号 p. II_167-II_173
遡上率の高い魚道を設計するには,最適な魚道の幾何学形状の把握が必要となる.これまで階段式魚道のプール長やプール水深などの最適値の探索が行われてきたが,プール底面は水平が前提であった.本研究では片側切欠き付階段式魚道において,プール底面の横断勾配および流量を変化させ,オイカワの遡上特性に及ぼす影響の解明を試みた.その結果,水平および切欠き側が低水深となる底面勾配より,切欠き側が高水深となる底面勾配におけるオイカワの遡上率が高く,流速の増加に伴いその傾向が顕著となることが解明された.これは,オイカワが遡上前に高水深領域を選好して待機すること,および遡上の助走に高水深で低流速な領域が必要だが切欠き側が高水深となる底面勾配の場合,この条件を満たす領域が切欠きに近いために遡上率が向上したと推定される.