2022 年 78 巻 6 号 p. II_51-II_62
本研究では,西之谷ダムおよび益田川ダムを対象として,流水型ダム上流地点と下流地点における河床環境および底生動物群集の比較を行った.益田川ダムおよび西之谷ダム下流への粗粒土砂供給減少によって生じる下流河床の変化は現時点において見られなかった.一方で,西之谷ダム下流では砂利割合の減少が確認された.2基の流水型ダム貯水池における底生動物の群集構造は,対照地点と明確に区別され,貯水池における土砂の移動性低下に起因する造網固着型の個体数増加や滑行型の個体数減少や砂利堆積による掘潜型の個体数増加が確認された.西之谷ダム下流では砂利が減少することによる巣匍匐型の個体数の減少が確認された.一方で砂利の下流供給の停滞がないと考えられる益田川ダム下流では携巣匍匐型の減少は確認されなかった.