2022 年 78 巻 7 号 p. III_135-III_142
本研究では膜の細孔径または材質のみが異なる膜を用意し,実都市下水を原水とするベンチスケールMBRを用いて定流量ろ過を行い,ファウリングの進行速度を比較した.同じ材質(CPVC製),同様の開孔率で細孔径が異なるUF膜とMF膜を用いた実験では,両膜のファウリングの進行速度にほとんど差はなかった.局所的フラックスが同程度であれば細孔径がファウリング発生に及ぼす影響は小さいことが本実験では示唆された.膜構造がほぼ同様のCPVC製UF膜とPVDF製UF膜を用いた実験では,CPVC製膜の方がPVDF製膜よりもファウリングの進行速度が速かった.本研究で設定したフラックス範囲(0.72-0.90m/d)において,PVDFはCPVCに比べファウリング発生を抑制できる膜材質である可能性が示された.本研究で発生したファウリングはいずれもバイオポリマーを主な構成成分とする膜表面ゲル層によるものであったが,SEM観察およびFT-IR分析ではゲル層特性の差異を検討することはできなかった.