2022 年 78 巻 7 号 p. III_205-III_212
バイオマスプラスチックであるポリ乳酸の製造コスト低減化には,発酵液からの乳酸精製法の改善が必要とされる.本研究では,乳酸カルシウム晶析法に代わりキトサンを用いた乳酸塩による乳酸精製法を検討した.乳酸発酵過程でキトサンを中和剤として用いてキトサン乳酸塩を生成し,アセトンを用いた貧溶媒添加法によりキトサン乳酸塩を培養液から回収する方法を示した.また,キトサン乳酸塩をアンモニア水中に添加することで,乳酸アンモニウムとキトサンを分離回収した.貧溶媒添加法を用いたキトサン乳酸塩の回収あるいはアンモニア水からのキトサンの回収では,キトサンは高分子である方が有利と考えられた.なお,回収された乳酸アンモニウムはポリ乳酸の原料に,キトサンは再び乳酸発酵の中和剤として利用可能である.