2022 年 78 巻 7 号 p. III_213-III_222
廃棄物系バイオマスのメタン発酵でpHに影響を及ぼす有機酸の例として乳酸に着目し,回分式実験によるメタン発酵特性および酸滴定時のpH挙動を解析した.回分式実験にて乳酸を17.2gCOD/L投入した場合,pHが種汚泥の7.4から6以下に低下しメタン発酵が阻害された.11.5gCOD/Lの乳酸および乳酸当量に対応する水酸化カリウムを投入すると,メタン発酵への阻害影響は見られず,投入乳酸由来のCODに対するメタン発生量の割合は0.8程度であった.処理対象基質の異なるメタン発酵の実施設の汚泥について,酸塩基平衡に基づくpHの計算を試みた結果,酸滴定に伴うpH低下を概ね再現できた.アンモニア濃度などを含む汚泥性状の分析結果から,槽内有機酸濃度に対応するpHを予測できることが確認された.