2022 年 78 巻 7 号 p. III_401-III_408
多自然川づくりなどための魚類調査の労力を軽減するため,生物から水中に放出されるDNA(環境DNA)分析が注目されているが,断面代表値を得るための採水方法や流下距離は不明確である.本研究では,まず河川2断面の横断方向3点,水深方向2点の計6点で採水し,メタバーコーディング解析を行うことで,横断面での環境DNAの分布と断面代表試料の採水方法を検討した.次に10断面で採水してqMiFish法で定量分析し,上流で検出され,下流では検出されない魚種の事例を収集し,環境DNAの減少速度係数を求め,流下距離を推定した.その結果,横断方向3点で表層水を採水することでほぼ断面を代表する試料が得られること,環境DNA減少速度係数は3.55[hr-1]であり,流下距離は環境DNA濃度と流速に応じて0.1~3.5kmに変化することを示した.