2022 年 78 巻 7 号 p. III_409-III_414
長良川には塩水遡上を防止するために河口堰が設置されたが,堰下流域の底層には高塩分濃度水が停滞することがある.また,長良川河口堰にはせせらぎ魚道が併設されているが,大潮時には塩水くさびが魚道低層を遡上する弱混合型であることが示されている.以上より,河口堰下流域および魚道内には密度成層が形成されるため,遡上中のニホンウナギは塩分濃度の異なる状況に突然遭遇すると推測される.また,全長110mm以下のニホンウナギは浸透圧調節機能が未発達のため,塩分濃度の急変に遭遇した際に斃死し易いとの指摘があり,魚道下流域の密度成層を破壊し強混合型のバッファーゾーンを設ける必要がある.本研究では,海水と同等の塩分濃度3.5%の環境水に馴致したニホンウナギ未成魚を0~3.5%に変化させた塩分濃度の実験水に投入し,遊泳挙動を解析した.その結果,濃度3.5%の塩水に馴致したニホンウナギ未成魚は塩分濃度が2.0%以下に急低下すると,塩分濃度の急変に追随できないことが明らかとなった.したがって,バッフルブロックなどを用いて魚道下流域の密度成層を破壊することで,塩分濃度が約2.0%となる強混合型のバッファーゾーンを設け,一度ニホンウナギをこの領域で馴致させることで減耗の少ない遡上が可能になることが示唆された.