2022 年 78 巻 7 号 p. III_95-III_101
シアノバクテリアMicrocystis aeruginosaとアオコの発生に有利な環境で増殖できる珪藻Nitzschia paleaの競争関係に与える水温及びpHに着目して, M. aeruginosaに対する増殖抑制効果について検討した. 水温15–30℃において, M. aeruginosaの最大細胞収量はN. paleaとの競争によって単藻培養よりも約50%低下した. アオコが発生しやすいとされる高水温を想定した30℃においてもN. paleaはM. aeruginosaに対して抑制効果を発揮した. M. aeruginosaはpH7.0, 8.0, 9.0においてN. paleaと競争培養することで最大細胞収量がそれぞれ27, 53, 70%減少した. すなわち, N. paleaはアオコが優占しやすいとされる弱アルカリ性においてM. aeruginosaの増殖能力を低下させた. しかし, 20–30℃及びpH7.0–9.0においてM. aeruginosaが優占したため, N. paleaによる増殖抑制効果を高めるためにはN. paleaの優占度を人為的に増加させる必要がある.