2018 年 74 巻 5 号 p. I_25-I_30
本研究では,近畿地方で 8 月のゲリラ豪雨生起頻度が将来変化するメカニズムを,5km解像度領域気候モデル(RCM05)を用いて,気温減率と南方からの水蒸気流入の将来変化に着目して解析した.
解析の結果,近畿地方でゲリラ豪雨が増加する8月下旬において,気温減率が減少する(大気が安定化する)にも関わらず,大気の静的な不安定度指標であるショワルター安定度指数(SSI)が不安定化する日の頻度が増加することを示した.また,SSIが不安定化する要因は下層水蒸気量の増加であることを示した.さらに,クラスター分類法である自己組織化マップ手法(SOM)を用いて,8月下旬における下層水蒸気量増加の大きな要因は,太平洋から近畿地方陸域へ向かう地上風系,すなわち豊富な水蒸気フラックスが南方から近畿地方陸域に供給される大気場の頻度が増加することであることを明らかにした.