2020 年 76 巻 2 号 p. I_25-I_30
北海道のような積雪寒冷地では,水資源を積雪に依存しており,気候変動に伴う水循環への影響を受けやすい.さらには,水害や土砂災害への影響が想定され,積雪寒冷地の水循環の変化を踏まえた適応策の検討が急務である.本研究では,寒冷地における気候変動の影響評価のため,気候変動予測データを用いた北海道全域の空間解像度1kmの統計的ダウンスケーリング(SDS)情報を用いて,蒸発散量,積雪深等の水文諸量の推定を行った.推定において,SDSのバイアス補正で参照するデータの変更と,降雪水量の補正を行うことで,流域水収支の整合性が高い推定結果を得た.また,作成したSDS情報を用いて,将来気候における北海道の水文諸量を推定し,年最深積雪の減少傾向を確認した.北海道における気候変動への適応策の多面的な検討への,本SDS情報の活用を期待する.