2021 年 77 巻 2 号 p. I_145-I_150
本論文は,降雨流出モデルの精度向上に向けた物理特性を解明するため,単一地質からなる32のダム流域を対象として,山地流域において流出に大きく影響する表層地質とパラメータの関係性を分析すると共に,異なる表層地質からなるダム流域において過去に経験のない大規模洪水の再現計算を行うことで,大規模洪水への適用性について検討した.その結果,表層地質とパラメータの関係性については,中間流出に関するパラメータが支配的になること,また,花崗岩類及び火山岩類においてパラメータのばらつきが大きくなることがわかった.そして,大規模洪水への適用性については,表層地質に関わらず大規模洪水によるパラメータ推定をした結果が最もピーク流量を表現できることが明らかになったことから,本モデルが大規模洪水に対して適用可能であることを示した.