2021 年 77 巻 2 号 p. I_37-I_42
本研究では,ダム下流域に甚大な被害をもたらすことが懸念される,異常洪水時防災操作の発生頻度に対する気候変動の影響について,令和2年7月豪雨でダム建設後初めて異常洪水時防災操作が実施された下筌ダムおよびその直下に位置する松原ダムを対象に検討を行った.なお,解析には流出モデルおよびダムモデルの入力値にd4PDFを利用した.その結果,下筌ダムにおける異常洪水時防災操作の発生頻度は,平均気温4℃上昇の条件下で最大約5倍上昇する可能性が示唆された.一方,松原ダムでは,現在気候とほぼ変化しないことが確認された.そのため,ダム下流域の被害抑制にダムが 2 段構えで運用されていることの有効性が示唆された.