2021 年 77 巻 2 号 p. I_469-I_474
本研究では,令和元年佐賀豪雨と将来起こり得る極端豪雨に対し,嘉瀬川流域の市街地の浸水被害特性と既存のインフラ施設を有効利用する温暖化適応策について検討した.対象とする豪雨イベントとしては,顕著な浸水被害が見られた令和元年8月の佐賀豪雨とd2PDFから抽出された嘉瀬川流域の48時間降水量674mm(リターンピリオド470年)を用いた.d2PDFによる極端豪雨に対し,流域治水の一環として嘉瀬川ダムと灌漑用の利水ダムである北山ダムを用いた治水適応策の効果について経済性を含めて検討したところ,事前放流を行うこと等により既存インフラを有効利用することで嘉瀬川流域の外水氾濫を抑えることができるとともに,浸水被害額を300億円程度軽減できることが分かった.