抄録
地区交通計画を進める中で,サイレント層に関わる問題が多く起こっている.本研究は,サイレント層の存在を許容する計画策定プロセスの有効な手法として,社会実験に着目した.交通規制の変更による交通安全対策が社会実験として実施された地区を対象として,社会実験前後におけるサイレント層の意識を,意識調査への督促,およびパネル調査により捕捉した.その結果,社会実験前の施策提案時のサイレント層と非サイレント層では,施策への賛否意識に差がないが,社会実験後においては,サイレント層は非サイレント層よりも施策を許容している割合が高いことが分かった.また,社会実験の実施により紙上の提案時には得られなかった反対意見を引き出していることが示唆され,サイレント層を許容した計画策定プロセスへの社会実験の有効性が示された.