2018 年 74 巻 3 号 p. 243-260
本研究では,大阪府と兵庫県を対象に,大規模小売店舗の出店が既存小売店舗(衣料品・食料品)の撤退及び売上げに与えた影響を実証的に検証する.実証分析では,商業統計個票データより18年間にわたるパネルデータを構築し,DID法を用いて影響を定量的に評価する.分析の結果,既往研究と異なり,大規模小売店舗の出店が既存小売店舗の存続確率及び売上げに対して負に影響するケースが存在する可能性が示された(売上げへの負の影響は特に短期~中期).また,大規模小売店舗の出店影響は,[1]期間(短期~長期),[2]出店地点から既存店舗までの距離,[3]出店店舗の売場面積,[4]既存店舗の種類に応じて異なることが確認された.分析結果は近年のまちなかへの大規模小売店舗の出店促進施策に一定の注意を促すものである.