2022 年 78 巻 6 号 p. II_168-II_181
本研究では,1981年から1990年に廃止された地方鉄道の駅を対象として,地方鉄道の存廃が駅勢圏における年齢階層別人口の社会増減に及ぼす影響を,統計的因果推論の代表的手法である傾向スコアマッチングを用いて推定した.
その結果,地方鉄道を廃止することで,期首時点で10-14歳といった5年間のうちに高校卒業を迎える年齢の人々を含む年齢階層や,30-34歳,35-39歳といった子育てや結婚などのライフイベントを迎える年齢階層,60-64歳,65-69歳といった高年齢階層の社会増減率を低下させることを統計的に明らかにした.また,同一コーホートの社会増減率を長期的に分析した結果,期首時点で10代のコーホートでは統計的に有意な差は見られなかったものの,期首時点において20代・50代の長期的な社会増減に影響を及ぼすことを明らかにした.