2022 年 78 巻 6 号 p. II_460-II_469
本研究では,協働の場づくりにおける「ハーモニー」の役割に着目し,異なる主体が相手のパートを聴きながら自分のパートを歌唱するというハーモニー共同行為が協働を促進する効果とその条件について検討する.その際,ハーモニーを用いたワークショップの知見を基にして,混合歌唱とパート別歌唱という2つの歌唱方法を取り上げ,前者の方が後者に比べて自律性と協調性に基づく協働の場が醸成される傾向がより高いという仮説を立て,それを検証するための実験を行った.本実験より,混合歌唱を行ったグループでは,パート別歌唱を行ったグループに比べて,グループワークの失敗の申告回数が高く,グループ内の利他的傾向もより高くなる傾向が見られ,仮説を支持する結果が得られた.最後に,本研究の結果が協働の場づくりに示唆する点について考察した.