2023 年 79 巻 12 号 論文ID: 22-00162
W,Cu,Ni,Snを含有する塗装用耐食鋼板の塗膜膨れ抑制機構を明らかにするため,さびの分析及び電気化学測定を実施した.その結果,耐食鋼の塗膜膨れ抑制機構は,W,Cu,Ni,Snがさび粒子を微細化し,Wがさび層へカチオン選択透過性を付与することで腐食因子の透過を抑制し,SnとWがインヒビター効果により地鉄の溶解を抑制することで鋼材の腐食速度を低減することであると推定された.また,耐食鋼を用いた溶接継手の耐塗膜膨れ性は母材に対して同等以上を示し,鋼材および溶接継手の機械的特性はJIS G 3106の各強度グレードの規格値を満足した.耐食鋼を適用した橋梁の塗替えによる100年間のライフサイクルコストは従来鋼に対して64%低減する.