土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
79 巻, 12 号
通常号(12月公開)
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 木ノ本 剛, 村越 潤, 平野 秀一, 佐藤 歩, 倉林 拓矢, 澤田 守
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00088
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     面外ガセット溶接継手の疲労強度に対する寸法効果については,解析的な検討は多く行われているものの,疲労試験による系統立てた検討例は少ない.本検討では,道路橋の溶接継手を対象として,ガセット長さを200, 400, 800mm,主板厚を9, 25, 40mmに変化させた大型の面外ガセット溶接継手試験体の疲労試験を軸引張荷重下で行い,継手の寸法諸元が疲労強度に及ぼす影響について検討を行った.また,疲労試験時のビーチマーク試験と溶接止端近傍のき裂発生・進展時のひずみ計測の結果を基に,き裂進展性状の分析を行うとともに,その結果を踏まえた疲労き裂進展解析により,継手の寸法諸元が疲労強度に及ぼす影響の試算を行い,その寸法効果を明らかにした.

  • 中村 健人, 宮嵜 靖大
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00173
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     ステンレス鋼は,従来鋼に比べて高耐食性を有するため,土木鋼構造物に活用することで構造物の高性能化が期待できる.本論文では,我が国でのステンレス鋼製土木構造物の合理的設計法の開発を目的として,Cr-Ni系ステンレス鋼製中空正方形断面柱の連成座屈強度評価法を提案する.まず,対象とするステンレス鋼製柱のパラメトリック解析を行い,各柱モデルの非線形有限要素解析を実施した.つぎに,これら柱の終局強度時の変形形状から,全体座屈,局部座屈および連成座屈に分類した.そして,ステンレス鋼製柱の連成座屈について,全体座屈に対する基準耐荷力曲線に基づき,板の局部座屈による強度低下を考慮する手法を提案した.この評価法は,ステンレス鋼製柱の連成座屈による終局圧縮強度を94%〜112%の範囲で評価できることを明らかにした.

地圏工学
論文
  • 安井 克豊, 竹下 祐二
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 22-00333
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     シールド工事においては施工時の地盤変状の計測が重要である.本文では,シールド掘進に伴って発生する地盤変状を地上設置型合成開口レーダー(GB-SAR)を用いてリアルタイムかつ非破壊状態で計測する方法を提案した.GB-SARでは数百メートル以上の遠方から計測対象地盤にレーダー波を照射して面的な変位分布を計測する手法であり,計測箇所にターゲットなどの設置が不要であるため,施工敷地内への立入制限のある施工条件下においても,地盤変状の連続計測が可能である.本法の有用性は,地盤変状の計測に制約条件の多い空港施設の直下を通過したシールド工事にて得られた実測値を用いて検証し,GB-SARの計測精度を支配するレーダー波の照射角度に対する計測管理方法や計測精度を向上するための留意点についての知見を示した.

  • 古川 全太郎, 笠間 清伸, 片山 遥平, 秋本 哲平, 上野 一彦, 堤 彩人
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00105
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     本論文では,浸透固化処理した砂質土を対象に実施された非排水中空ねじりせん断試験結果をもとに,地震時の液状化による構造物被害予測プログラム(FLIP)を用いて地震応答解析を行う際に必要な液状化パラメータを,浸透固化処理土の一軸圧縮強さから適切に設定する方法を示した.加えて,浸透固化処理工法で背後地盤を液状化対策した岸壁を対象にモンテカルロシミュレーションを行い,浸透固化処理部の一軸圧縮強さの空間的ばらつきが岸壁の地震時残留変位に与える影響を確率統計的に分析した.さらに,解析結果を浸透固化処理後の地盤調査に活用することを目的として,調査数に依存して生じる統計的推定誤差を考慮し,岸壁の地震時残留水平変位について信頼性水準に従って要求性能を照査する手法を提案した.

  • 内堀 大輔, 渡邊 一旭, 櫻田 洋介, 荒武 淳
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00129
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     地下構造物の長期的な保全のために,通信用マンホールの点検作業を効率的かつ安全に行うことができる自律飛行 UAV(Unmanned Aerial Vehicle)を開発した.地下空間でUAVを自律飛行させるために,レーザと超音波による距離計測センサおよびカメラを用いたUAVの自己位置の推定方法と,推定した自己位置情報を用いた飛行方法を構築した.また,マンホールのような狭小空間の飛行に適したUAVのガード構造を検討した.実寸大マンホールにおけるUAVの飛行検証の結果,地上からマンホールの内部への入孔,マンホール躯体部での移動と画像撮影,マンホールからの出孔,着陸までの一連の飛行動作を完全自動で実現し,点検用の画像が撮影できることを確認した.これにより,点検員はマンホールに入ることなくUAVの撮影画像を用いて点検を行うことができる.

土木計画学
論文
  • 田中 皓介
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 22-00356
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     日本においては公共事業に否定的な世論の存在が指摘されている.多発する豪雨などの災害対策のみならず,より高度な社会的インフラストラクチャーの構築が求められるが,その際には世論の支持を得て公共事業を実施していく必要がある.一方で,諸外国に目を向けると,多くの先進国において公共事業費は増加傾向にある一方で,日本の減少傾向は特徴的なものである.本研究の目的は,米国および英国との比較から,日本における公共事業に対する世論の特徴を明らかにすることである.各国首都に在住の各310サンプルを対象としたアンケート調査を行った.分析の結果,日本の世論の特徴として,非効率さや事業のムダといった否定的論点の関連や,政府や建設企業に対する信頼の低さとの関連が明らかとなった.

  • 轟 朝幸, 熊澤 将之, 兵頭 知, 稲垣 具志
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 22-00367
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,わが国のビジネス航空のさらなる利用拡大に必要な対策の示唆を得るべく,運航実態や利用意識の観点について,海外との比較を踏まえて把握を行った.この結果,わが国のビジネス航空市場は拡大しているものの,欧米と比較すると依然として規模が小さく,羽田空港に利用が集中することで,拡大のネックになっている事を示した.また,ビジネス航空に対する意識に日米で違いがあることを示した上で,ビジネス航空の利用には,個人の興味や意欲といった自発性が大きく影響していることを明らかとした.これらより,ビジネス航空の利用拡大に向けて,空港機能と利用者意識の観点から考察を行った.

建設材料と構造
論文
  • 三浦 進一, 中村 直人, 塩谷 和彦
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 22-00162
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     W,Cu,Ni,Snを含有する塗装用耐食鋼板の塗膜膨れ抑制機構を明らかにするため,さびの分析及び電気化学測定を実施した.その結果,耐食鋼の塗膜膨れ抑制機構は,W,Cu,Ni,Snがさび粒子を微細化し,Wがさび層へカチオン選択透過性を付与することで腐食因子の透過を抑制し,SnとWがインヒビター効果により地鉄の溶解を抑制することで鋼材の腐食速度を低減することであると推定された.また,耐食鋼を用いた溶接継手の耐塗膜膨れ性は母材に対して同等以上を示し,鋼材および溶接継手の機械的特性はJIS G 3106の各強度グレードの規格値を満足した.耐食鋼を適用した橋梁の塗替えによる100年間のライフサイクルコストは従来鋼に対して64%低減する.

  • 細田 暁, 𠮷田 悠人
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00037
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     山口県の品質確保システムにおける橋台のコンクリート施工記録を活用して,ひび割れ発生確率曲線を作成し,示方書に示される曲線との比較や考察を行った.示方書の曲線と比較し,明らかに左にシフトしたものが得られ,解析に用いた熱膨張係数が,山口県のコンクリート工場群で作製した供試体の計測から得られた熱膨張係数よりも大きいことによると考察した.実験で計測された熱膨張係数を用いて作成した曲線は示方書の曲線とほぼ重なることが確認された.コンクリート施工記録の全てのリフトのデータを用いた場合,正規分布を仮定して曲線を作成する際の引張強度,引張応力の変動係数が19%と既往の研究に比べて大きくなり,2010年以降のデータのみの場合の変動係数は12.5%と小さく,施工の基本事項の遵守が浸透したことで,品質が向上したと考察した.

  • 綾野 克紀, 藤井 隆史, 岡崎 佳菜子
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00042
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     コンクリートの凍結融解抵抗性は,淡水中に比べ塩水中では著しく低下する.コンクリートは,凍結と融解の繰返しによって劣化が進むが,塩水中においては,凍結だけでも破壊に至る.本論文は,このような低温下におけるコンクリートの破壊に,コンクリート中の水酸化カルシウムが与える影響を調べた.また,高炉スラグ細骨材や高炉スラグ微粉末を用いることで塩水中でのコンクリートの劣化を抑えられることが,コンクリート中の水酸化カルシウムの溶解が少ないことに関係していることを明らかとした.

  • 竹田 京子, 佐藤 靖彦
    2023 年79 巻12 号 論文ID: 23-00078
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,繰返し移動輪荷重を受ける道路橋鉄筋コンクリート床版の破壊機構に基づいた疲労寿命予測法の構築を目的として,まず,破壊形式を整理して3つに分類し,破壊形式に応じた疲労寿命評価を行う必要性を示した.その後,実験的手法によりRC床版のはり状化部材の疲労破壊機構に基づく残存せん断耐力低下モデルの構築を行った.さらに,配力筋比,圧縮強度,支持条件の差異を考慮したせん断耐力式とS-N曲線式からなる疲労寿命予測法を提案し,輪荷重走行試験における一定荷重および階段状漸増荷重の評価,RCおよびPC床版の疲労寿命評価を可能とした.過去の輪荷重走行試験の実験データとの比較により,提案する疲労寿命予測法の適用性を確認した.

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