土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号(地球環境)論文
夏季の気象変化による成層の発達が及ぼす霞ヶ浦への影響の評価
松本 大樹増永 英治横木 裕宗
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2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27026

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抄録

 本研究では,茨城県南東部に位置する霞ヶ浦において,気候変動に伴う地球温暖化が湖水の水質に及ぼす影響について評価した.2005年から2022年までの18年間の気象と水質データから,7月の気温は1年に約0.1度毎上昇しており,気温と湖の水温間に明確な正の相関関係も見られた.気温の上昇とともに湖の成層が強まり,鉛直混合が抑制されることで湖の底層に貧酸素水塊が発生する.気温の上昇による成層の挙動をより詳細に調査するために,北浦で観測された水質データと気象データを統合し解析を実施した.成層の発達と貧酸素水塊の生成には,風速によるシアー生成と太陽光放射(短波放射)による表面熱浮力フラックスが強く作用していることが確認できた.地球温暖化による気温上昇の影響を確認するために,18年間の中で最も暑い年(2018年)と最も涼しい年(2007年)の水質の違いを調べた.2018年は2007年と比較して,成層度合いが強く,底層の溶存酸素量も小さいことが確認できた.また比較スケールを拡大した暑夏と冷夏の比較でも同様に,暑夏は冷夏と比較して成層度合いが強いことが確認できた.したがって,気温の上昇により湖の水質が顕著に変化していることが示唆された.今後の地球温暖化に伴う気温上昇により,湖の水質状態を変化させる可能性があることが懸念される.

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