2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17066
気候変動を踏まえた海岸保全施設の整備計画が必要である.しかしながら,気候変動には多大な不確実性が伴う.本研究では,将来に不確実性がある場合に用いられる意思決定手法の一つであるリアルオプション分析を海岸保全施設整備計画に適用した.高知市の長浜海岸を対象に,海面上昇と将来気候台風による越波・浸水による被害額の算定を行い,リアルオプション分析を用いて最適な堤防の嵩上げ高さと整備時期を求めた.分析の結果,気候変動の進行が小さい場合には,嵩上げ高さ2.5mが最適で,将来にわたって追加対策を取る必要がないことがわかった.シナリオツリーの進み方により,気候変動対策が必要な時期と規模が異なることが示された.リアルオプション分析により,経済的に最適な整備時期と整備水準を動学的に求めることが可能なことを示した.